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各地で生まれる第三者への経営継承
リタイヤ酪農家の経営を引き継ぐリレー方式で就農
北海道N町
Kさん(52)さんはS県H市で工場長をしていた1989年、家族との接点が少ない生活に悩み、N町が募集していた酪農新規参入者の募集に応じて移住しました。 生活のために仕事があるはずなのに、現実はその逆になっていると感じていたのです。
町内の酪農家で研修中、妻が腰を痛めたので経営を譲りたいという人が現れ、その経営を引き継ぐことになりました。「リレー方式」と呼ばれるもので、移譲先に研修先を切り替え、合わせて1年間の研修を終えた90年、正式に経営を引き継ぎました。
土地、施設を公社が買い取って5年間リースで貸し付け、5年後に残存価格で買い取りました。牛の買い取りには、町が半額を助成してくれました。
1年間の期限付き研修助成が独立へのモチベーション
住居は、研修期間中は町営住宅、継承後は前経営者の住宅を買い取りました。研修中は町が生活費として月15万円を助成してくれました。Kさんは「1年間という期限があるため、独立に向けたモチベーションが高まった」と言います。
独立後のリース料金は年350万円、買い取り時にはスーパーL資金を3500万円借り、現在の返済額は年280万円です。経営は順調で、現在経産牛40頭、育成牛21頭、農地(牧草地)面積は53ha。配合飼料に偏り、事故も増えて93年に一度だけ赤字になりました。このため、集約放牧方式に切り替え、乳量は減ったものの、経営収支は格段に向上しました。Kさんは放牧研究会を立ち上げ、代表を務めています。
Kさんは農協の理事を務め、07年には農水大臣賞を受賞するほどの優良経営。飼料の高騰など経営環境は厳しさを増していますが、「酪農の将来は暗くない。やり方次第で所得は上げられる」と話し、道の新規就農アドバイザーを務めています。
地域の就農研修機関から後継者を受け入れて法人化
福井県W町
W町で水稲、麦、ソバなどを経営するKさん(59)は、地域の中核的担い手。同居する息子は農業団体に勤め、あとを継ぐ気はありません。そんなとき、Kさんの前に現れたのが東京出身のHさん(31)です。
Hさんは00年に東京の大学を卒業後、食品卸の会社に就職。金沢に勤務していたとき農業に関心を持ち、04年に会社を辞めてW町内にある農業研修機関で研修しました。研修機関での研修2年目は3haを任され、独立後に備えて販売先も自分で見つけるという実践的なもの。指導農業士でもあるKさんに後見人になってもらい、作業のコツなどの指導を受けました。
Hさんの仕事ぶりに好感を持ったKさんは、後継者にならないかと持ちかけました。2年間の研修を終えるといよいよ独立。1年目は町が集めてくれた2haに、Kさんが1haを貸してくれ、3haでスタートしました。この時点でKさんの後継者になる話が進んでおり、2年目には両者の経営面積を合わせて法人を設立することになります。
出資額にかかわらず「1人1票」の新たな形の法人を選択
Kさんは以前から法人化を考えていたため、Hさんを迎えるに当たり、2人で普及センターなどの指導を受けて会社法の施行で新しく始まった合同会社(Sファーム)を設立しました。資本金は300万円で、代表であるKさんとHさん、Kさんの家族が出資しています。数年後には代表権をHさんに譲る計画です。
農地は法人が借りる形で、機械・施設は賃借料負担を抑えるために耐用年数を倍にしてリースにしています。Sファームは地域の2つの農用地利用改善団体の集積対象として位置づけられ、今後急速な規模拡大が予想されます。Kさんは「今年から対外的なことはHにやらせる。あとは体力」と経営者としての育成に力を入れています。
酪農法人で研修し、
町内農家のリタイヤを待って買い取り就農
北海道H町
KさんはH町の隣町の酪農家の二男。畜産大学を卒業後カナダの牧場で研修。1977年に帰国し、H町で13頭から酪農経営をスタートしました。97に法人化し、現在は総頭数500頭の大規模経営です。これまで100人以上の研修生を受け入れ、同町の酪農新規就農者15人のうち、8人がKさんの下で学びました。
念願の北海道暮らしを満喫
東京で劇団員をしていたIさん(39)、H子さん(41)夫妻は、北海道に移住しようと全国新規就農相談センターが行っている就農フェアに参加して情報を集めました。1999年5月からKさんの農場で2年間研修。乾草をもらいに行った農場(高齢で離農)の環境が気に入り、施設と土地を購入して独立就農しました。
就農支援資金を3000万円借り入れ20頭でスタートし、2年目にも近代化資金を借りてさらに20頭増やしました。農地は当初25haを保有合理化事業で借りましたが、07年にスーパーL資金2700万円で購入。放牧主体のため、さらに近隣の離農跡地20haを購入する予定です。
Kさんが「地獄の特訓」と呼ぶ研修は厳しく、「無我夢中であまり憶えていない」と話すKさんですが、コストを抑えた堅実経営で、黒字を続けています。
「年を取ってから家を建てても仕方がない」と、07年の暮れには牧場の一角に輸入のログハウスを建設。念願の北海道暮らしを満喫しています。
夫婦の夢の酪農場を意欲的に拡大
Eさん(29)は道内のM町出身。酪農ヘルパーを5年間務めたあと、離農農場で独立就農しました。A市出身の妻のKさん(28)はペット専門学校を卒業後、酪農法人で働いているときEさんと知り合い、Eさんのヘルパー時代に結婚しました。
2人とも自分の農場を持つのが夢で、EさんがKさんの農場で2ヶ月間ヘルパー研修をしているときに独立を相談していました。
独立は、病気がちだった60歳前の酪農家の離農農場を、農地45ha込みで公社のリース事業を利用して居抜きで借り入れています。現在、育成牛、経産牛合わせて100頭を超える規模で、5年間のリース期間終了後は7000万円で購入する予定です。牛舎に余裕があるため、120頭が目標です。
H町担い手育成センターが就農支援
H町での新規就農に当たっては、町担い手育成センターが多方面から支援します。就農希望者には2年間の研修を義務づけ、5年間のリース(離農農場を公社が買い取り、就農者に5年間のリース)期間中は町がリース料を半額助成、買い取り後3年間固定資産税を免除、営農開始時にJAが経営資金200万円を貸与(町が利子補給して無利子)−−などです。