農業経営継承事業

各地で生まれる第三者への経営継承

体験レポート7

経営パートナーとして入社時に出資求める
北海道M町

バレイショ、大豆、ソバなどの畑作物を約230ha経営する有限会社F社長のSさん(58)は、2人いる息子が会社勤めで現在のところ後を継ぐ意向を示していないため、早くから経営のパートナーとして社員(出資者)を募集してきました。

12年前に大手就職情報誌に募集広告を出し、2人採用しました。そのうちの1人は「適正が合わず」(Sさん)しばらくして辞めましたが、もう1人の大学新卒で入社したKさんは、畑作業と営業でがんばっています。

大規模化で多彩な人材を求める

積極的に規模拡大し、全国屈指の大規模経営を実現しているS社。周囲でリタイヤする農家が多く、借りている農地の購入を求められるため「利益を農地の購入に回している」(Sさん)状況。経営の各部門を任せられる人材の確保は緊急の課題です。

このため、全国新規就農相談センターと日本農業法人協会が年数回開く新・農業人フェアにもブースを出し、ハローワークでも求人しています。しかし、応募してくる人は田舎暮らしを楽しみたいという人が多く、経営のパートナーとして出資を求めると嫌がる人が多いといいます。

「わたし自身、誰かに言われて農業をしているわけではない」と話すSさんは、「やりたい人が農業をできる仕組みとして出資を求めている。わたしの実体験の裏打ち」と意欲ある人材を求めています。

体験レポート8

地域の法人で研修中の就農希望者を後継者として受け入れ
滋賀県N市

滋賀県長浜市のMさん(69)は50歳で会社を辞めて就農。借地で規模拡大を進め、10年間で1.5haから9haまで拡大してきましたが、2人の子供は教員と会社員で、今後就農する意思ありませんでした。

そのため、MさんはJAが出資して設立された集落営農法人で後継者確保をねらいとした研修が開始されたことを知り、就農を希望する研修生に技術・知識を教えながら自分の借地を引き継がせていこうと考えました。

これに応じたのが、Sさん(49)です。MさんからSさんへの継承を始めるに当たり、事前に両者の間で基本的な取り決めを記載した「覚え書き」が取り交わされました。内容は、今後約5年かけて借地名義を徐々にMさんからSさんへ変更していき、その間は共同で作業を行うというものです。

まず、1.6haの耕作権がSさんに移譲されましたが、それに先立ってMさんは借地のすべての地権者にSさんに引き合わせて了解を得ました。地権者との信頼関係も同時に引き継がせようという考えからです。

新たな担い手の継承で地域の期待が高まり、急速に規模拡大

Mさんは作業手順を口頭で教えながら、Sさんには作業記録をつけるよう指示しました。特に、Mさんは肥培管理面で食味を重視した独自の方法をとっていたので、ほ場ごとに肥料散布の時期や量などを記録することによって、それら良食味米を栽培するための具体的なノウハウを引き継ごうとしたわけです。

移譲・継承は順調に進み、当初の計画では1.5haずつ移すというものでしたが、Sさんが所得を確保していく上でも借地面積はより多い方がいいというMさんの判断から、2年目には予定の2倍の約3haの借地がSさんに移譲されました。Sさんが担い手として稲作を大きく展開させていく方針であることが地域の人々に伝わったことから、他の兼業農家からの借地も拡大し、就農8年目には経営面積20haという大規模経営となりました。

体験レポート9

酪農家8戸が第三者継承の支援組織化
北海道M町

M町のO地区では、2003年に後継者のいない酪農家8戸による第三者継承の支援組織が設立されました。O地区では酪農経営の高齢化・後継者不足が進んおり、このままでは地域の酪農が維持できないという問題がありました。そこで、「自ら築き上げてきた酪農を新規就農者が中継ぎし、酪農の夢と新規就農者の夢を実現しながら地域農業を持続し、地域を活性化する」ことを目的に、離農予定の酪農経営と継承希望者をつないでいくための組織を作ったのです。

まず、町や農協を通して継承希望者を受け入れます。そして、2年間の研修が行われますが、1年目は全会員(8戸)すべてで1〜2ヶ月ずつ研修を受けます。この間に、継承希望者は各農場の営農条件を知ると同時に、様々な技術や経営方針があることを学びます。また、何人もの酪農家とつながりを持つことで地域への参入を促進します。

その後、継承希望者が志向する営農条件・経営方針、離農予定者の年齢などを考慮の上、継承する農場を選定(マッチング)し、2年目はその農場でより実践的な研修を行います。このとき、組織全体で研修内容について検討し、継承希望者が総合的な技術習得ができるよう配慮しています。

そして3年目に、農場リース事業などを活用して資産(牛・機械施設・住宅)が継承希望者に譲渡され、継承希望者は新規就農者として経営を開始することになります。このとき、離農した元酪農家は別途住宅を取得することになっています。

新規就農者が後輩の指導に当たる

この取り組みで就農した1人が道外出身のKさん(40)です。支援組織の設立と同時に研修生となり、2年間の研修を経てF牧場を継承しました。元経営者のFさん(65)は、継承にあたって町内に住宅を取得し転居しました。Kさんは、現在乳用牛56頭、牧草地約25haという経営を行っています。また、支援組織の会員となり、後輩にあたる研修生Tさんへの助言などを行っています。Tさんも継承する牧場での研修を進めており、事業の実施時期に合わせて資産の譲渡が行われることになっています。

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