「農業法人等における雇用の実態に関するアンケート調査」の結果
平成20年度の調査結果

 全国農業会議所では、2010年2月に農業雇用改善推進事業の実施10県の農業法人等とその従業員を対象に、「農業法人等における雇用の実態に関するアンケート調査」を実施しました。アンケートは郵送により行い、農業法人等291経営と従業員550人から回答を得ました。

 事業主へは、経営形態や従業員規模、就業環境などについて尋ね、従業員へは、就業理由や将来の希望、現状の満足度などを聞いています。ここでその一部をご紹介します。

 このアンケートに協力頂いた法人等および従業員の概要は、次のような傾向がありました。

回答法人等の傾向(アンケート回答上位3位まで)
主要経営(複数回答)
:稲作(41%) / 露地野菜(29%) / 畑作(22%) / 施設野菜(22%)

年間販売額
:1〜3千万(22%) / 1〜3億円以下(18%) / 5千万〜1億円以下(17%)

従業員規模(役員を含む人数)
:5〜9人(28%) / 10〜19人(23%) / 1〜4人(22%)

回答従業員の傾向(アンケート回答上位3位まで)
年齢と性別(男性女性)
:20歳代(19%10%) / 30歳代(16%9%) / 50歳代(10%10%)

在職期間
:1年未満(26%) / 1〜2年未満(17%) / 10〜15年未満(10%)

アンケート結果調査結果
週の労働時間(事業主への調査)

週の労働時間は、「40〜45時間未満」(31%)が最も多く、次いで「45〜50時間未満」 (28%)、「35〜40時間未満」(20%)となっている。40時間前後が標準的な労働時間となっている。
経営形態別にみると、株式会社(n:58)で「40〜45時間未満」(35%)を挟んで前後の 時間帯が26%だが、特例有限会社(n:129)では「40〜45時間未満」(33%)、 「45〜50時間未満」(32%)に集中している。個人経営(n:55)では、「35時間未満」から 「45〜50時間未満」の間に20%前後で分散している。

月の休日数(事業主への調査)

月の休日数は、「6日(週休1日+隔週1日)」(24%)が最も多く、次いで 「5日」(23%)、「4日」(16%)となっており、5日以下で46%、6日以下で70%を占めている。
経営形態別にみると、最多が、株式会社で「6日」(29%)、特例有限会社でも「6日」(32%)、農事組合法人で「5日」(29%)、個人経営で「4日」(24%)となっており、個人経営では、所定の休日を定めている割合は低く、定めていてもその日数は少ない傾向にある。 また、「6日(週休1日+隔週1日)」〜「8日(週休2日)以上」の合計では、株式会社(59%)、特例有限会社(53%)と過半を越えているが、農事組合法人(47%)では過半を割り、個人経営(33%)となっている。

規則・制度の制定状況(事業主への調査)

定めている規則や制度のあるのは、272経営体(94%)であるが、制定率が60%を超えるのは、 「労災保険」(75%)、「雇用保険」(73%)、50%を超えるのも「通勤手当」(52%)、 「就業規則」(51%)にとどまる。特に、「退職金制度」(20%)、「慶弔金制度」 (20%)、「住宅手当」(20%)、「扶養(家族)手当」(17%)、「固定残業代」(5%)などは、20%以下にとどまっている。
また、就業希望者が就職を決める際に大きな考慮条件となっている「健康保険」(49%)、「厚生年金保険」(47%)共に半数を割り、「賞与(ボーナス)」を支給している経営体も39%だった。

規則・制度の制定状況(事業主への調査)

構成員規模別に各項目での制定状況を[70%以上][50〜70%未満][30〜50%未満][10〜30%未満][10%未満]によって色分けしてみると、差異があることがわかる。 株式会社で、[70%以上]の項目が最も多く、[10%未満]の項目が最も少なく、充実度が相対的に高い。相対的な充実度は、以下、特例有限会社、農事組合法人、個人経営と低くなっていく。
法人経営体と従業員5人以上の個人経営体で強制加入となっている「労災保険」、「雇用保険」は、法人経営では80%を超えているものの、個人経営で、「労災保険」(36%)、「雇用保険」(33%)とほぼ3分の1で未加入となっている。
「年次有給休暇」は、経営形態に係わらず与えなければならないが、株式会社でも40%と低い数値となり、個人経営では4%しか与えていない。

離職理由(事業主への調査)

離職の理由(上位3つの合計)として、「転職」(43%)が最も多く、次いで「仕事が合わない」(41%)、「病気など健康上の理由」(35%)、「独立して就農」(20%)、「勤務状況・態度の問題(退職勧奨を含む)」(20%)となっている。
また、1位の離職理由のみでみると「仕事が合わない」と「病気など健康上の理由」の順番が逆転しており、「病気や健康上の理由」についての検討も必要になる。これにつぐのが「独立して就農」である。農業にとって前向きの離職であり、このルートでの就農状況をフォローすることも大切だろう。

アンケート結果調査結果
農業法人等への就業の理由(従業員への調査)

農業法人を就業先として選択した理由は、「就農に興味があった」(46%)が最も多く、次いで「勤務地が希望に合っていた」(26%)と、主要な理由なっている。後者は副次的な理由だが、それぞれがおかれた状況によっては、主要な理由となっていると考えられる。
また、不況の影響も見え、「他産業での求人がなかった」(10%)と回答した人も53人いる。
「田舎暮らしに興味があった」(7%)、「都会での生活がいやになった」(3%)となり、都市以外で暮らしたいために農業に就業する者も若干ながらいた。

将来の希望・進路(従業員への調査)

今後の希望・進路は、「勤務先で、現在と同様の仕事に従事する」(50%)が最も多く、次いで「農業で独立する」(13%)となっている。また、「勤務先で経営幹部になる」(11%)も一定程度ある。
回答者の傾向として、若い世代ほど「農業で独立する」と考えていて、それよりも若干少ないものの「勤務先で経営幹部になる」と考えている者も多い。
「農業以外の分野で働く」(5%)、「他の農家で勤務する」(2%)と、現状に満足していないと考えられる回答もあった。

職場環境の満足点(従業員への調査)

職場の労働環境について、満足に感じていること(上位3つ)に上げられたのは、「仕事のやりがい」「仕事の内容」「職場の雰囲気(人間関係)」が多い。
多くの従業員が「仕事のやりがい」を感じている一方で、「給与額」(6%)、「研修・教育体制」(5%)、「福利厚生」(9%)に満足を覚えている従業員は、ほとんどいなかった。
「自身の将来性」(13%)もあまり高い数値とはならず、将来への手ごたえを感じている者はわずかである。

職場環境の改善希望点(従業員への調査)

職場の労働環境について、改善してほしいこと(上位3つ)に上げられたのは、「給与額」「職場の設備」「研修・教育体制」「休日数」がとなった。
特に、「給与額」は上位3つ、1位ともに、最も多い回答となり、多くの従業員が改善を希望している点となった。  次点となった「職場の設備」は、女性からの改善希望が圧倒的に多く、トイレや更衣施設などの整備を求めていると考えられる。
満足点で13%にとどまった「自身の将来性」だが、改善を希望する点でも14%と高い数値にはならず、満足はしていないが、改善の必要性も感じていないという従業員が多い様子がうかがえる。
その他、「仕事内容」(12%)、「職場の雰囲気(人間関係)」(17%)には、一程度の満足感が見える。