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(株)妙高ガーデン  山下光明 代表取締役


食の安全を消費者に

日小高い山あいの集落に、十数棟のハウスがどっしりと並んでいる。妙高市/旧新井市南部、飯山街道の外れと言えば、冬場の豪雪が頭に浮かぶ。そんな上越地方には珍しい光景だ。「自分で何かやりたい」−若き山下光明社長(S45年生)の脳裏にあったその思いがここに実現している。
山下社長は、建築会社の営業マン生活を経て、平成13年7月、(株)オーツー・コーポレーションの立ち上げに加わり、その2年後には新井市(現妙高市)での大葉の試験栽培を開始、さらに平成15年には「株式会社妙高ガーデン」の設立から運営を任されることになった。

頑ななまでに旧来の農法や技術を変えない今の農業のやり方を見て、山下社長は強い使命感を感じ始めていた。食の安全が叫ばれる中で、農産物できちんとトレースできるものを作りたいとの思いが募り、消費者に求められるものを作ることを新しい事業の基本的な考え方と位置づけ、ミスト農法を通じ安全・安心な作物の安定供給を目指すこととした。


農業に経営革命を

農産物には豊凶がつきものであり、価格は大きく左右される。しかし、「こうしたバクチのような生産では安定が望めない。安全なものを安定的に供給するためには、生産者が安定していなければならない。そのためには、若い人が農業に参入できる体制や、きちんとしたものを作ればきちんと評価される仕組みを作り、なおかつ収入が見込めるスキームにしないと、農業経営としては成り立っていかない」と考えた。
さらに、同社のシステムは、いわば加工食品の管理に近く、使用する土や水、肥料のトレースがきちんと行え、作物の生産管理がハウス、さらにはレーンごとにしっかりパソコンで管理できることが最大の特徴であり、「食べておいしい、日持ちもする、ロスも少ない」という評価の下、通年同じ価格での安定的な大葉の出荷が確保されている。
山下社長は人事管理にも工夫を凝らしている。「農業は単価を安いものを扱っているので、農業をビジネスとして進めていくのは難しい。社員が会社に来れば一定の給料がもらえるという発想では経営が成り立たない。全国的に建設会社の農業参入がみられるが、採算が合っていないケースが多いのは、建設業での高い給料を払ったまま、受注が減った分を農業で補おうとしているため」と指摘する。
会社で採用している「支配人制度」もこの秋から具体的に動き出しそうだ。同制度は、自己申請により社員に栽培棟の生産管理を任せ、人事や資材の購買などの権限を委譲し、利益の3分の1の処分を支配人に任せるというもの。「サラリーマン感覚でいてもらってはまずい。自分がやっているという感覚、部下と一体となっている意識を持たせ、きちんとやっていくことによって収益を生み出す仕組みづくりをする」のがねらいだという。


地域や生産者の交流を

山下社長、妙高ガーデンとも全くの新規参入といっていい。しかし、これまで地域とは何のトラブルもない。市が積極的に誘致を図り、40数名に及ぶ地権者との交渉など参入にあたっても全面的にバックアップしているが、さらには地元の農業者も役員に加わり、「緩衝役」になったり、地元農業者が嘱託社員として参画してくれていることが大きい。最近になって、地元の農業法人との交流を始めたほか、全国農業会議所主催の「新・農業人フェア」にも出展し、人材確保の傍ら、農業法人等との交流を経営に役立てている。大葉はなかなか食材として地域に融け込みにくいが、加工品や洋菓子など他の食品企業との連携を図っていきたいとしている。


(株)妙高ガーデンの農業経営データ

生産品目と規模 ハウス7,200坪大葉 600坪×10棟、ハーブ600坪×2棟
従業員 社員12名、嘱託社員3名、派遣社員6名、研修生3名、パート75名


注: ミスト農法は、日本古来の伝統農法と先端技術の融合と言われる。農薬を使わず、有機物をふんだんに持った土壌の力を生かしながら、根の成長を最大限に促す仕組みにより作物本来の味と栄養素を引き出す農法で、ハウス内で温度、湿度、養分等を一定の条件で制御し、安全・安心な作物の安定供給を確保している。


 

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