根知地区も、例にもれず、少子高齢化や担い手の減少といった課題をかかえている。既に山間地の農地は荒廃が始まっていた。「このままでは、基盤整備の済んだ平場の条件のいい農地もいずれ荒廃してしまうのではないか。そうなれば根知地区の活力がなくなってしまう」、、、そんな危機感を小田島社長は抱き、「そうなる前に自分たちが受け皿になれないか」と平成10年から農地保全の道を探っていた。
農業生産法人を皮切りに
最初の糸口は、農業生産法人の立ち上げだった。平成12年に小田島建設の役員4名、OB、社員と考えに賛同してくれた農業者の計8名で、有限会社「やる米花農業」(やるまいか農業!)を設立し、水稲の全面受託・作業受託を行った。会社名は地元の言葉で、「やろうよ!農業を」の意味。
しかし、「やる米花」はあくまで別会社であり、会社自ら取り組み、地域を守ることをたえず考えていたこともあって、平成16年3月に糸魚川市が農業特区の認可を得たのをきっかけに、小田島建設も11月に市と協定を結び、会社として農業に参入することとなった。
周囲の懸念が着実に信頼へと
「やる米花」時代に既に農業を経験しており、農業参入には苦労はなかったが、ほ場の癖や特徴はやはりやってみないとわからなかった。また農家出身でもなく、当初はわからないことも多く、「やる米花」設立には3年もかかったし、地域の人たちにも最初は、企業は儲からないものには手を出さないだろう本当にやる気があるのかとか、建設残土置き場にするのではないか、など疑心暗鬼の面も多かったが、地域の理解も次第に得られるようになった。3年くらいかかった。
農業参入で地域に活力?
将来は、現在の水稲6.0haを20ha程度に規模拡大し、育苗の受託を行っていきたい。しかしこれまでは、地域とあつれきを生みたくなかったので、無理な農地集積は行ってこなかったし、これからも受け身の姿勢で、農地を貸したいという申し出があれば、どんな条件の悪い農地でも対応していく考えだ。今の農地も山間地の条件の悪いところであったり、転々としているが、そのうちまとまってくるのではないか。「越の丸ナス」はJAを通して東京市場に出荷しているし、米もインターネット等で直接販売も行っているが、消費者の反応もみたいし価格の安定を確保するために、今後直接販売の比率を増やし、JA出荷と直販の比率を5:5くらいにしたい。都会の生徒の体験農業の受入れにも取り組んでいるが、根知の地域が元気になってくれる上で大事だと思う。
小田島社長は、「もう少し農地もまとまるのではないかと思っていたが、私たちの会社の参入で地域の高齢の方たちも元気になって頑張ってやるようになった」(笑)。
それでも地域としてはよかったのではないかと思っている。信頼され、地域に愛される企業として今後も頑張っていきたい、と話してくれた。
(株)小田島建設の農業経営データ
生産品目と規模 |
水稲6.0ha、育苗ハウス6棟、越の丸ナス600本、ソバ0.9ha、ブルーベリー0.4ha |
従業員 |
役員3名、社員7名(うち農業専従1名)、パート3名 |
|