連載企画
スイス農業のいま【3】

環境保全型農業

 00年から日本でも有機JAS制度が始まり、環境保全型農業への理解は深まりつつある。しかしその手間やコストが、生産者の手取りには反映されにくいのが実情だ。スイスでは、売る側が積極的に環境保全型農産物をブランド化することで、価格面から生産農家を支えている。

 スイス国内を二分する大手流通業者の一つであるコープ(生協)では、自らが展開する食品ブランド「ナチュラプラン」で、環境保全型農産物を通常より高い価格で販売している。

 チューリッヒ近郊に出店する「ビオコープ」の店内に入ると、緑や青、黄、赤に色分けされた商品ラベルが目につく。これは環境配慮や動物福祉の度合いにより、緑の有機農法〜赤の慣行農法まで、4段階の格付けを表したものだ。それぞれの商品には、10〜15%の価格差がつけられている。

 お客の購買状況について、店長のソープ・ギードさんは「値段を比べている感じはありません。有機の人はいつも有機、慣行の人はいつも慣行と、それぞれの考えに基づいて買い物しているようです」と語る。有機製品の売り上げは全体の1割ほどに達している。

 販売価格は店側と生産者が2週に1度集まり、作柄や売れ行きを考慮しつつ決めている。この日は慣行農法のトマトがキロ当たり約440円。有機トマトだとこれが約530円となる。

 流通側がブランド力で生産者の販売を支えているとすれば、その品質を生産面から担保しているのが、政府による農産物認証制度「スイスギャランティー」だ。栽培基準が細かく定められ、一つの基準を達成するごとに、加算金が農家に支払われる。農薬や肥料の使い方など生産に直接関係する部分だけでなく、小動物や昆虫など生物多様性への配慮も求めているのが特徴だ。

 予防的な農薬散布の禁止、連作の禁止などのほか、農地面積の7%以上を無農薬・無整地とする「エコ調整地」の配置などが定められている。エコ調整地は圃場をぐるりと囲むことで、周辺の水質を守ることが目的だ。また、小動物の通り道にもなるため、圃場と圃場の間を切れ目なくつないだ場合にも加算がある。

 最も盛んな酪農で特筆すべきは、エサの自給が基本となっている点だ。エサが自給できるということは、そこから出るふん尿も自前で処理できるという考え方に基づく。農村部では広大な飼料用トウモロコシ畑が、牧草地と並んでスイスの典型的な風景となっている。

(2005/11/04)


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