価値高める工夫を 都筑経営研究所代表 都筑冨士男氏 (元ローソン・ジャパン代表取締役)

  大多数の農家は「生産コストの上昇と農産物価格の下落」で農業所得は低下し続けている。今後もこの流れは変わらないだろう。
  この悪循環から脱皮するには、今までの農産物の「生産を中心とした農家」から「販売も考える生産農家」に変わる必要がある。消費者の求める「安全で体によい特徴のある農産物」を「消費者の求める価格」で提供する必要があるのだ。
  過去の農産物の販売価格は、基本的には「コストオン方式」で決められていた。つまり「生産コストプラス適正利益」が農家の求める適正な販売価格だった。物が不足する時代や規制のある時代には、この方式で十分通用した。しかし、時代は供給過剰、国際化、自由競争の流れの中で「消費者主権の時代」へと大きく変わってきた。
  この時代の変化に対応するために農家は、今までの「コストオン方式」から「マーケットイン方式」に転換しなければならない。この転換は農家にとって天動説から地動説に転換するぐらい厳しい選択になると思う。
  「マーケットイン方式」とは、まず、消費者がどのような農産物をいくらで求めているかを知ることだ。そして消費者の求める販売価格を決定する。
  そこから適正利潤を控除した差額が生産コストである。この生産コストの範囲内で農産物を生産すれば適正利潤の確保ができ悪循環を立ち切ることができる。
  このためには生産コストをできるだけ国際標準に近づける必要がある。生産コストを引き下げるためには、規模の拡大、農業技術の向上、農業資材や販売コストの削減や情報技術(IT)の活用などが大切だ。
  農業同様、国際競争力のない我が国の小売業は、国際競争力を強化するためにコスト削減に取り組んでいる。情報技術を活用し、商品の発注データを検品や支払いデータとして活用することによって伝票の入力作業はなくなり、事務コストを大幅に削減した。また、チェックアウトのセルフ化によりレジスターの人件費を大幅に削減した。このように我が国の小売業は、コスト削減の努力によって国際競争力を高めつつあるのだ。
  現在、農政が進めている大規模化は、大規模化することが目的ではなく、大規模化により生産コストを引き下げ国際競争力を強化することが目的のはずだ。日本の農業にとって、より付加価値の高い農産物の生産とコスト削減との取り組みは避けて通れない08年の緊急の課題といえる。

(2008/01/01)


<全国農業新聞TOPへ>    <全国農業会議所TOPへ>