ドジョウ――田んぼはドジョウの保育園










   唱歌「どじょっこふなっこ」でおなじみのドジョウ。ドジョウのカルシウムはウナギの10倍、木枯しの夜には「ドジョウ鍋」で一杯というお父さんも多いと思います。かつては農村のいたる所で見られたドジョウですが、最近ではその姿を見かけません。  ドジョウはどうして減ってしまったのでしょうか。  その理由の一つは、ドジョウが水路と田んぼの間を自由に行き来できなくなったためです。50年ぐらい前からお米をたくさんとるために、ふぞろいな田んぼを長方形にしたり、田んぼの水を抜きやすくしたりする整備を行ってきました。その結果、田んぼより低い場所にコンクリート製の水路が造られ、田んぼと水路の間に段差ができました。ドジョウにはこの段差を乗り越えることがとても難しいのです。  ではなぜドジョウにとって田んぼが大切なのでしょうか。  冬眠から覚めたドジョウは田植えとともに田んぼに移動します。田んぼにはドジョウの好きなミジンコなどの餌が豊富で、水路に比べて水温が高いのです。ドジョウは梅雨のころ田んぼで産卵し、孵化した子ドジョウは田んぼでスクスクと育ち、田んぼの水が抜かれる前に水路に戻っていきます。
 田んぼはドジョウの保育園だったのです。
 最近、田んぼと水路のネットワークを取り戻すために、新しい魚道の開発が進んでいます。この魚道は斜めの仕切りを交互に設置するところがミソで、水が少ない時もドジョウが体をくねらせて登って行けるように工夫されています。生き物が住みにくい環境は私たちにとっても住みにくい環境です。田んぼに生き物のにぎわいを取り戻し、生態系のバランスを考えた米づくりが求められています。
 ところで、人間も好きなドジョウですが、もっとドジョウが好きな生き物がいます。それは、天然記念物のトキです。1羽のトキは1か月に2.5`ものドジョウを食べます。新潟県佐渡ではトキの餌のためにドジョウの養殖にチャレンジしています。
 農林水産技術会議事務局研究調査官 中嶋 勇

(2008/03/28)


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