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農業委員会、各地で額に汗 最適化の出発点・農地パトロール本格化

 夏本番の8月、農業委員会で実施する農地パトロール(利用状況調査)が各地で本格化する。遊休農地の発生や違反転用を防ぐため、地域の農地利用を確認する出発点となる取り組みだ。目指す「農地利用の最適化」に向けて、全国の農業委員や農地利用最適化推進委員が額の汗をぬぐいながら地域を回る。

 宮城県の仙台市農業委員会(佐々木均会長)は6月上旬に農地パトロールを始めた。新体制への移行を7月に控え、例年より早い取りかかり。6月1日から14日にかけて、市内を13の地区に分け、37人の農業委員と委員会が委嘱した66人の業務推進員が班になって各担当地区を見回った。

 6月13日の午前は若林区六郷地区を巡回した。7年前に襲われた津波から復興を遂げた同地区。ただし、全てが震災前と同様に再生されたわけではない。かつては100軒近くの住宅があった場所は、災害危険区域となり住めなくなった。持ち主が遠くに引っ越した後に受け手がおらず、管理されずに放置される農地もある。
 委員らはそうした遊休農地も含めて見て回り、相談しながらA分類(再生利用が可能な荒廃農地)やB分類(再生利用が困難と見込まれる荒廃農地)の判断を下していった。
 高橋勝彦委員(65)は「被災後の圃場整備は早く進み、田んぼの区画が大きくなった。ただし、かつての所有地にこだわる農家もおり、これから権利の調整が必要」と話す。
 午後には隣接する同区七郷地区を回った。同地区は約540ヘクタールの水田が広がる穀倉地帯。震災以降続いた圃場整備が今年で終了し、全ての農地が水田や畑として利用できるようになる。
 同委員会はこの後11月をめどに、追加で確認が必要な農地を再調査する。2回に分けて調査することで、より正確な情報を集める。
 佐々木会長(65)は「遊休農地は早期に発見して、地権者と連携し解消していきたい」と意気込む。昨年は所有者に草刈りや作付けを促して、2.9ヘクタールの遊休農地を解消した。

 7日のパトロールでは青葉区宮城地区で、菊地守委員(48)の協力のもとドローンを初めて使用した。草が生い茂り、立ち入りが難しい農地を上空から確認した。今回は試験的な取り組みだったが、今後の活用には期待が寄せられている。「中山間地域では、どこが誰のものか分からないような農地が増えている。ドローンの活用なしでは把握しきれないと思う」と佐々木会長は実用化の必要性を実感している。

 農地パトロールでのドローンの活用は各地で広がっている。佐賀県の鹿島市農業委員会は昨年の農地パトロールで、ドローンを使って中山間地の農地を上空から撮影した。ドローン操作などは、IT企業の(株)オプティムが協力した。山林化した農地に踏み込む必要がなく、中山間地での調査の負担は減った。
 しかし、実用化には課題もある。ドローンで撮影した画像と土地の区切りを一致させるのが難しく、最新技術の導入には資金が必要だ。同委員会は今年のパトロールで、再び同社と連携して実用化への道を探る。
 事務局では「画像と地籍図が簡単に対応できれば、パトロールの手間が大きく省ける」と期待は大きい。

 2016年に改正農業委員会法が施行されて3年目を迎え、本年度中に全ての農業委員会が体制移行を完了する。同法の重点である農地利用の最適化が成果を求められるステージに入った。その意味でも、地域の農地を総点検する農地パトロールの持つ意味は大きくなっている。得られた情報は遊休農地対策だけでなく、農地中間管理機構への貸し付けなど農地の利用集積を進める上での基本情報となる。
 機構への農地情報の提供は農業委員会の重要な仕事。それぞれの遊休農地が機構の取得基準に適合するかを機構が的確に判断できるよう、正確な情報を伝えることが求められている。
 パトロール後、遊休農地の所有者には利用意向調査を実施する。多くの農業委員が対面による調査を実施し、所有者の意思に基づき土地の有効利用を促す。近年は遊休農地の所有者に限らず、全農地を対象に意向調査する農業委員会も増えてきた。
 農業委員と推進委員には人・農地プランの話し合いを主導するなど、地域のリーダーとなることも求められている。地域の農地利用を考えるためには、現状の把握が出発点。本格的な盛夏を迎え、全国の農業委員会がこのスタートラインに立つ。

写真説明=仙台市の農地パトロール。現場を見て、遊休農地の分類を判断

 [2018-8-3]