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貿易自由化の波(6) 和牛 輸出急増、2018年は247億円

 一連の貿易自由化で「攻め」が期待されている農産物の輸出。その中で特に注目されているのが和牛だ。これまで閉ざされていた欧州連合(EU)市場への扉が開かれ、環太平洋連携協定(TPP11)参加国への進出にも追い風が吹いている。世界最高峰の品質はどこまで浸透するのか。
 地域の農家100戸ほどから飛騨牛を受け入れる岐阜県高山市のJA飛騨ミートではEU向けの取り扱いが今年に入って3割ほど増えた。参事の下出敏樹さんは「現地ではまだ目新しいが、じわじわと広がっている」と話す。
 同県からの飛騨牛の輸出量は2008年度の0.3トンから、2017年度には約30トンと100倍近くまで増加した。飛騨ミートでは現状、国内向けの出荷が大半だが、輸出の増加に対応できる体制作りを進めるつもりだ。これまでにEUや豪州、カナダなど14の国や地域の輸出認定を受けた。国内の需要が頭打ちになる中、海外で販路拡大を目指していく。
 2月のEPAの発効で、EUに輸出する牛肉の関税は12.8%、100キロ当たり141.4〜304.1ユーロ(約1万7675〜3万8013円)が即時に撤廃。TPPでは、カナダは26.5%の関税を6年目に、メキシコは20〜25%を10年目に撤廃する。
 国産牛肉の輸出は各国の受け入れ解禁に伴って2011年以降毎年増えており、2018年の輸出額は2010年の7倍以上になった。現在は31の国や地域に輸出可能。農水省が2019年までに250億円の牛肉の輸出を目標とする中、2018年の実績は247億円まで迫った。
 一方で、TPP加盟国からの輸入量も増えており、生産者には不安が広がってもいる。下出さんは「EPAやTPPによる市場開放は和牛の生産者にとっても不安な要素が多いが、輸出でそれを巻き返したい」と話す。
 EUなどで和牛を普及させるには、食文化の違いが課題だ。牛肉は厚切りのステーキにするのが欧米の文化で、輸出量の3分の2がステーキ向けのロース。すきやきなどの食べ方を含めた提案をしなくては市場は伸ばせない。さらに、EUでは和牛の遺伝子を受け継いだ豪州産の「WAGYU」が出回っている。本物の和牛の認知度を高め、品質的にこれを上回るものとして差別化していく必要がある。
 産地ごとの輸出から業界が一体となった輸出へと切り替えるため、2014年には日本畜産物輸出協議会が発足した。事務局の藤野哲也さんは「日本の和牛の質の高さは確かで、食べればおいしいと受け入れられる。適切な調理法も含めて、これが日本の和牛だとPRしていく」と力を込める。

写真説明=フランス・パリのイベントで注目を集める和牛のブース

 [2019-4-12]