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農政解説

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日本人女性の活躍と中山間地たどる 第5回東南アジア農業事情視察団

 本紙主催の第5回東南アジア農業事情視察団は1月26日〜2月2日にかけてミャンマーとベトナムの2カ国を訪れた。ミャンマーで農家の暮らしを守るために活躍する日本人女性と、ベトナムの中山間地域の暮らしを紹介する。

 最大都市ヤンゴンに住む柴田京子さんは、栽培と小売りの両面から同国の有機農業普及に努める。
 柴田さんはNPO法人・地球市民の会に属し、2003年から同国東部シャン州で有機栽培を指導している。貧困にあえぐ農家の生活向上と、農薬問題の解消が目的だ。「農家は使い方が分からない中国製農薬を過剰散布し、自身にも健康被害を生じさせている」と指摘する。
 これまで150回の栽培研修を行い、修了者は3千人を超える。しかし、有機作物であっても通常の市場では他の作物と同価格でしか販売できず、有機栽培の定着は難航する。そこで、生産者に利益が生まれるよう、適正価格で販売する店舗「グリーンヒル」を2014年にヤンゴンで開設した。
 30人の修了者と研修センターから、有機農業の第三者認証を受けた作物を仕入れる。売値は市場価格の約2〜3倍で初年度は売り上げが伸び悩んだ。口コミやフリーペーパーで徐々に認知され、ヤンゴン在住の日本人を中心にリピーターが増えつつある。生産者の増益に寄与しており、店舗移設や輸出でさらなる販路拡大を狙う。

 首都ハノイから約180キロ離れたホアビン省マイチャウ郡は、美しい田園風景が広がる山岳地帯。7民族が共生し約5万人が暮らす。同郡で農業普及員を務めるザンさんに中山間地域の農業事情を尋ねた。
 同郡では、水稲は乾期と雨期の二期作で、各期の作付面積は800ヘクタールと1000ヘクタール。水田の90%は棚田で、1区画が狭小なため普及する機械は小型トラクターのみ。普及員の指導により平均収量は増加傾向で、現在は10アール当たり700〜800キロ(もみベース)が各期に収穫される。
 営農は世帯単位だが、集落ごとに水路管理チームを組み、当番制で見回り、協力して水利調整を行う。
 1人当たり耕作面積は多くて300平方メートル。なお、同国の「土地法」は、「全人民の所有に属する土地を国家が代表して管理する」と規定する。省や栽培作物によって定める上限面積(メコンデルタ地帯の1年生作物栽培地なら3ヘクタール)の範囲内で個人に使用権を交付する。現在は政府の農業促進策で使用料は無料だ。
 品種改良研究は政府が担い、種苗は国営会社が販売。普及員が適当な地域に導入する。また、政府はバリューチェーンの構築を重視し、集落ごとに代表農産物を指定するよう指導する。気候が安定する秋と冬にスポットをあて、適した作物の研究や品種改良を進める。一方、ホームステイが盛んな集落では、観光客向けにあえて伝統作物を栽培する。主に欧州人が訪れ、評判は良いとのことだ。
 しかし、農業収入は非常に少ないのが現実だ。水稲と畜産、ホームステイ事業で生計を立てる同郡のクォンさんは「増産すると米価は下がる。大量生産しても農家収入は増えない」と、米は自家消費用しか作らない。畜産も規模縮小し、近年はホームステイ事業を収入の核としている。
 出稼ぎをする若者も多い。「集落を離れるのは仕事がないから。自分たちにはホームステイがあるが、山奥の農村では人は減る一方。地域を維持する方策はケース・バイ・ケースで考えなければならない」と、わが国にも共通する中山間地域の課題が語られた。

 [2019-4-12]