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農政解説

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面積要件や指定基準緩和 生産緑地の追加指定進む

 都市農地の保全が課題となっている。人口減少により都市部でもアパートなど賃貸住宅の需要の減少や空き家の増加が見込まれる一方、2022年には生産緑地地区の約8割で買い取りの申し出が可能となり、転用が進む恐れがある。都市住民から農地としての保全の期待が高まる中、2017年に生産緑地法(※1)が改正。条例を改正すれば同地区の指定面積要件を「500平方メートル以上」から「300平方メートル以上」に緩和できるようになった。これによる追加指定の動きに加え、東京都では農地の創出を支援する事業を始めるなど、新たな取り組みも出始めた。

2.5ヘクタールが追加指定 下限面積引き下げで
神奈川・川崎市

 神奈川県川崎市では2018年度、同地区の指定が急増した。前年度比で指定件数は7倍の42件、指定面積は4倍の2.5ヘクタールだった。同年度に市が指定面積要件を緩和したためだ。改正を周知するため、市内7カ所で説明会を開催。農地の後継者など約500人が参加し、生産緑地制度について認識を深めた。
 市は同年11月に農協や農業委員会などと対策協議会を設置して、都市農地の保全に向けた議論を開始している。新たな特定生産緑地制度(※1)を周知する他、2018年に制定された都市農地貸借法(※2)を活用した生産緑地の貸借マッチングも計画する。農業を続けるのが難しい農業者や規模拡大の意向がある農業者の情報を一元的に管理し、マッチングする仕組みだ。
 市の農地課は「市は長年都市農地の保全に取り組んできたが、近年の法改正などで追い風になっている。今後も貴重な都市農地を守っていきたい」と話す。

農委会の活動実る Uターン農地推進
東京・国分寺市

 東京都では、多くの市区が同地区の指定面積要件を引き下げた。さらに、国交省の都市計画運用指針に基づき「過去に転用の届け出がされたが現在は農地として耕作されている土地」の同地区への指定も26市区が可能にしている。都ではこれを「Uターン農地」と呼んで推進。また、買い取り申し出により同地区の指定を解除された土地の再指定も、29市区が可能にしている。
 都内の国分寺市農業委員会は、Uターン農地の指定を求める農家の声を受け、約10年にわたって市長や議長に建議してきた。これを受け、市は2015年度に同地区の指定基準を改正。同市並木町地域の農家では、新たな指定基準を利用して、過去にスポーツ施設に転用したが農地に戻していた約57アールを生産緑地に指定した。現在は所有者が果樹を栽培しており、「都市農地は住民に対して、農産物の供給に加え、緑地空間や災害発生時の避難場所を提供でき、保全する意義は大きい」と話す。
 同市農業委員会の田中豊会長(68)は「農業委員らの長年の努力によって指定基準を改正できた。今後、農家への周知を徹底していく」と話す。
 また、都は2018年度から、市街化区域内の農地の創出を支援する事業を開始した。建築物の基礎や舗装盤の解体処分、土壌改良などの費用を支援。補助率2分の1で、補助上限は10アール当たり500万円。練馬区や葛飾区で実績が出始めており、駐車場や宅地が農地に生まれ変わっている。
 練馬区の担当者は「都市農地は食料の生産に加え、防災などの多面的な機能がある。農業者の声を生かし、貴重な農地の保全に努めていく」と話す。

 (※1)生産緑地法・特定生産緑地制度 同法は生産緑地地区に指定した農地の固定資産税を宅地並み課税せず農地課税とするもの。一方で30年間の開発規制がかかる。2017年に改正し、同地区の指定の面積要件を緩和したほか、指定から30年が経過した場合でも、10年ごとに延長可能な特定生産緑地制度を創設。引き続き税制の優遇措置を受けられる。

 (※2)都市農地の貸借の円滑化に関する法律(都市農地貸借法) 都市農地の有効利用を促すため2018年に制定。生産緑地について、農地法の法定更新や下限面積要件が適用されない貸借が可能。貸借しても相続税納税猶予の適用が継続される。

写真=東京・国分寺市並木町地域のUターン農地

 [2019-5-10]