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動き始めたスマート農業(6)牛の行動観察 死亡事故ゼロ 発情も検知

 熊本県菊池市で、黒毛和種の肥育牛250頭と繁殖牛30頭を飼育する佐々畜産は昨年、牛の動態を24時間監視する「U-motion」を導入した。行動データを人工知能(AI)で分析し、異常や発情を検知するシステムだ。デザミス(東京・江東)がNTTテクノクロス(東京・港)と共同開発した。
 タブレット端末に起立や横臥(おうが)、採食、反すうなどの状態が時系列にグラフ化されたのを見た佐々隆文さん(39)は、即座に導入を決めた。肥育牛専門の獣医師で、家畜診療所勤務を経て8年前に就農したが「5年間死亡事故をなくせなかった。獣医師として屈辱」と振り返る。
 出荷が近づくと、約900キロの体重で起立困難に陥る牛が出てくる。発見が遅れると第1胃にたまるガスを排出できず、3時間ほどで死亡する。佐々畜産では、年に2〜3等の死亡事故が起きていた。出荷価格は1等150万円以上するため、大きな損失だ。
 家族が交代で夜中と早朝に見回っていたが、負担が大きかった。4年前、牛舎にカメラ8台を設置したが確認は必要。母親が過労で入院したとき、U-motionに出合った。
 1頭ごとに首に付けたセンサーが牛の行動を計測。データをクラウドに送って蓄積・分析し、スマホやタブレット、パソコンなどに送信する。センサーはタバコの箱ほどの大きさ。1トンの重さにも耐えられ、汚れは水で拭き取れる。
 異常が出るとアラートで通知。起立困難や疾病など重篤な場合、家族・従業員全員に緊急メールが送信されるため、安心して眠れるようになった。「注意牛」も一覧表示され、重点的に管理できる。
 発情発見のメリットも大きい。佐々畜産では親子を90日間同じ区画で飼う自然哺育。マウンティングがわかりにくいが、母牛の行動量が増え、反すう時間が減るなどの発情兆候がグラフ化されるため、21日周期と照らし合わせ、最適な受精タイミングが分かる。
 センサーの価格は1頭当たり月額500円から。佐々さんは「死亡事故を防いで軽労化できるので、メリットは大きい」と話す。
 デザミスは、農家の要望が多い分娩アラートの開発を進めており、年内の販売を予定している。

写真=「県内トップクラスの肥育成績になった」と話す佐々さん

 [2019-5-17]