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東日本大震災

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被災地で増える農地転用 安全な内陸・高台求めて

 東日本大震災の被災地域で農地を住宅などへ転用するケースが増え始めている。復旧・復興に取り組む農業委員会ではその対応に追われている。自治体が計画する高台への集団移転を待たず、内陸や高台などの農地に住宅を建設する人が増えているためだ。津波で沿岸部が壊滅的被害を受けた宮城県南三陸町(みなみさんりくちょう)では2011年度の農地転用許可が前年度と比べ約5倍に達している。
 「まずは安全な場所に住宅を確保したい。その気持ちは痛いほどよく分かる」――。同町農業委員会の高橋事務局長は現在の率直な思いを語る。
 11年度(11年4月〜12年3月)の同町の住宅用地としての農地転用申請件数は68件。転用件数全体156件の4割を超え、転用の目的としては最多だ。4条転用(権利移転のない農地転用)37件、5条転用(権利移転をともなう農地転用)31件、全て震災関連の住宅転用だ。
 同町は09年に農業振興地域整備計画を見直したが、現在もそのまま変わっていない。住宅転用の約半数が農振農用地区域から除外された農地。町民たちが「安全・安心」を求めて農地を転用しているのが垣間見える。「沿岸部では、もともと高台に住宅用地となり得るまとまった土地が少なく、やむを得ず農地を転用せざるを得ないんです」と高橋事務局長は現状を語る。
 農地転用は、申請ごとに農業委員会が現地調査する。「件数が多くなった分、町民からの問い合わせも多かったですね。現地審査は特に大変でした」とこの1年を振り返るのは農業委員会事務局の阿部誠さん(50)。同町農業委員会の現在の事務局体制は高橋事務局長と阿部さんの2人。明らかに人手は不足している。農家からの相談や農地の現地調査、電話による問い合わせの対応と復旧・復興の最前線は多忙だ。

 [2012-5-25]