カテゴリータイトル

東日本大震災

すべての記事を読む

食農のひろば 若い力で被災地を元気に――福島県立相馬農業高校農業クラブ

 福島県南相馬市の県立相馬農業高校は、原発事故の影響で、震災後の2011年5月に相馬市のサテライト校へ移転した。元の校舎へ戻るまでの半年間、苦学を強いられた生徒たち。稲の作付けが3年連続で見送りとなるなど、地元には明るいニュースが少ない。そんな中、農業クラブのメンバーを中心とした生徒たちは、花いっぱい運動や「てるてる馬坊主」作りのワークショップ開催、菜の花プロジェクトへの参加など、さまざまな活動を実践。“相農生の元気”が地域に活力をもたらしている。

 南相馬市原町区にある相馬農業高校は、原発から北へ25キロに位置する。震災直後、生徒たちは親せきなどを頼って市外へバラバラに避難し、混乱が続いた。校舎は緊急時避難準備区域内にあるため、11年5月にサテライト校(旧相馬女子校)で授業が再開された。ボードで仕切った体育館での授業。広い畑やハウス、畜舎はなく、思うように実習ができなかった。「早く畑で実習がしたい」「牛に会いたい」「相農の校舎に戻りたい」――生徒の間では、日に日にそんな思いが募っていった。
 ようやく避難指定が解除となり、元の校舎に戻れたのは同年11月。農業クラブの活動も再開した。地域の大人たちは、心が沈みがち。農業クラブ代表理事の小林亜妃さんは「相農生の元気を地域に発信していこう」と決意する。
 そんな思いを込めて取り組んだのは、昨年6月の「花いっぱい運動」。マリーゴールドのプランター50個を市役所や駅、郵便局、警察署、病院などに届けた。プランターには、「地域に元気を発信!」のステッカーが貼られていて、行き交う人たちの心を和ませた。
 10月に開催された「相農祭」では、シクラメンの鉢植えや野菜、農産加工品を販売。1400本の葉ボタンの苗でペガサスを描く、葉ボタンアートにも挑戦した。さらにクラブの中心メンバー杉上茜さんが考案したキャラクター「てるてる馬坊主(ぼうず)」を、手作りするワークショップを開催。
 てるてる馬坊主は、同地で900年以上続く神事「相馬野馬追」(そうまのまおい)が毎年梅雨明けの時期と重なるため、晴天を祈願して、てるてる坊主と馬を掛け合わせた人形を生み出したのが始まり。ゆるキャラブームも追い風となり、相農生が作った復興のシンボルとして市民に愛されている。
 10月6日には、南相馬市ふるさと回帰支援センターが主催する「菜の花プロジェクト」に参加した。津波を受けた沿岸部の1.5ヘクタールの農地に菜の花を植えるこのプロジェクト。植栽だけでなく、その前に塩害を受けた圃場の土壌調査にも立ち合った。
 当日は、NPO法人菜の花プロジェクトネットワーク(滋賀県近江八幡市)の協力を得て、東京農工大、東北大学、福島市・須賀川市・飯舘村)の住民、地元信用金庫の有志など、約120人が参加した。菜の花には、土壌の塩分や放射性物質を吸収する効果があるほか、観光資源としても活用可能。菜種はバイオ燃料として搾油する予定だ。
 今月の下旬には、一面に黄色の菜の花が咲く。その頃、激動の2年を過ごした3年生は卒業を迎える。「土が使えず、実習できないのが辛かった。大人になっても、野菜や花を作り続けたい」(西畑優希さん)。「菜の花はもちろん、南相馬がここまで良くなっていることを、見に来てほしい」(鈴木つかささん)。それぞれの想いを胸に、巣立っていく。

写真上=農業クラブの中心メンバーとして活躍した(左から)西畑優希さん、杉上茜さん、小林亜妃さん、鈴木つかささん、顧問の持地勝博先生
写真下=相農祭では、市民に「てるてる馬坊主」の作り方を伝授した

 [2013-3-8]