全国農業新聞 1999年7月

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7月2日号(第2186号)
1面 「地域が大事」前面に
 期待を集める特定農業法人一誕生から5年
(有)グリーンちゅうず 田中良隆社長にきく
   終始一貫サボート役 作業受託から機械修理まで「来るもの拒まず」
 特定農業法人の全国第一号として知られ、この十二月に認定後五年を迎える「有限会社グリーンちゅうず」(田中良隆社長、滋賀県中主町)がこのほど、要(かなめ)となる特定農用地利用規程の期間延長を申請した。地域の信頼を背景に経営規模を徐々に拡大、最大のメリットである農用地利用集積準備金制度も存分に活用した。「地域とどううまくやっていくかが一番大事」をモットーにする田中さんに、特定農業法人としての歩みと展望などを聞いた。
たなか・よしたか 1954年(昭和29年)滋賀県中主町生まれ。72年JA中主町農協入所、90年JA中主町営農課長。91年グリーンちゅうず取締役営業部長、94年から現職。96年農協退職。県農業法人協会会長。中主町農業委員。JAおうみ富士理事。
「グリーンちゅうず」の農機はほとんどが中古。新品の四分の一ほどの価格で入手し、コストダウンを図る

地域振興券生かして大きく
  子牛を買って育てる 不足分はお年玉貯金で
  岩手の金森さん一家
「地域振興券で子牛を」--とかく評価が分かれがちな振興券だが、三月に交付されてすぐ子牛を買った岩手県室根村の親子が議題になっている。訪ねると子牛はすくすく成長していた。
(「はるか」の名札を張った牛舎で子牛の給餌が日課の金森さん三兄弟と父・勝利さん

1面出作で周年出荷戦略
農地は減ったが後継者はいる
 徳島・藍住町の農家、北海道・早来町で試作2年目
  人気銘柄のニンジン
 「三年間でメドを」--と徳島県藍住町の五戸が、北海道・早来町でニンジンの試作を開始して今年で二年目に入る。その試作に至った理由は、徳島・藍住町の農地減少への対応、評価の高い産地の維持と発展、後継者対策、将来の流通戦略といった意味が込められている。試験・研究自的で農地法の許可を受けた。引き受けた北海道・早来町の農業振興公社の森下茂総括マネージャーに、藍往ニンジンの栽培が地域に与えた影響を聞いた。
(上)早来町農業振興公社のハウスでニンジン試作地の説明をする森下さん。
(左)ハウスでは白ネギの試作も行っている

新婚さん 新居へどうぞ
長野県四賀村が村営住宅建設
  若者の定住狙って 全国初の結婚推進課設置
  人口流出歯止めへ 早くも三組が入居

 長野県四賀村(中島学村長)は昨年、新婚カップルのための村営住宅五棟を建設した。同村取出地区の市民農園・坊主山クラインガルテン東側に建設されたこの住宅は、若者定住促進事業として建設された。さっそく三組が入居し、新生活をスタートさせ、残る二棟もすでに入居予定者が決まっている。同村は、今年度中にさらに五棟を完成させる予定。通称「新婚住宅」は、若者の定住と結婚対策の両面から、村民の期待が寄せられている。
幸せいっぱいの幸田夫妻。一階はダイニング・キッチンとリビングルーム、二階がベッドルーム

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7月9日号(第2187号)
1面 どうする中山間地域振興
農地・森林保全へ条例制定
 「適正な管理」義務化  京都府園部町
維持困難な場合 町に届け出が必要 
 盛土の約七割を占め、農業粗生産額で三分の一強に達する中山間地域に今、熱い視線が注がれている。国土・環境の保全や水源のかん養、景観形成など同地域の持つ公益的機能がとりわけ注目の的だ。ただ、いかんせん傾斜地が多く、条件が悪い。人口の過疎化・高齢化も進んでいる。こうした不利性克服のため、政府はわが国初となる「直接支払い」制度の導入を含め、新基本法農政の目玉として総合的な振興策の検討を急いでいる。各地の取り組み事例を追いながら、その課題を検証する。(編集部)
森林と農地に関する管理条例を制定した園部町の山林と水田

2面岐路に立つ食料・農業開発援助
  農業援助総量 三分の一水準に
  日本は世界一の援助国
    穀物の余剰在庫減少 援助国の財政悪化も影響
 国連食糧農業機関(FAO)調べでは、世界には現在、サハラ以南アフリカを中心に栄養不良人口が八億七千万人もいる。ところが、先進諸国から開発途上諸国に向けた食料・農業開発援助が一九九〇年代初めをピークにして、大きく減少している。その中で、日本の援助は重みを増している。日本は、各国農業を基本にした食料安全保障の重要性を主張し、新基本法案の中でも「国際協力の推進」をうたった。政府開発援助(ODA)全体と食料・農業開発援助の現状と問題点をさぐった。

樹の里親が富士山に植樹
MORIMORIネットワークが仲人役
 自宅で育てた苗木
  悪天候にもめげず 全国から持ち寄る
 山村と都市が手を結び、森づくりに取り組む「MORIMORIネットワーク」が「樹のホームステイ21」モデル事業を発足して一年過ぎた。山に自生する樹木の苗を家庭で預かり、ベランダや庭で育てて再び山に返そうというもの。この呼びかけに賛同した「樹の里親」たちが自宅で育てたヒメシャラの苗を抱えて、富士山二合目に集合。地元ボランティアとともに植樹祭が開かれた。
里子として育てたヒメシャラが、大木となり森林となるのは百年後。「木の里親」たちは、その日の姿を想像しながら植林した
1面茶業拡大へ移植法導入
鹿児島有明町 堀口泰久さん
  成園時は2倍に 密植苗で育成農地節約
  専用の移植機も開発

 茶の移植栽培で経営面積を大きく拡大−堀口泰久さん(鹿児島県有明町・掘口製茶(有)代表)は、茶を幼木で移植する栽培技術「密値展開法」と移植磯を考案し、生産面積を拡大している。この技術は、通常の倍以上の密度で苗を植え付け、三年後に半分を移植するもの。成園で採算が取れるまでの生育期間を短縮できる。掘口さんが、積極的に現模拡大を進めていく背景には、高齢化で農地が遊休化していく中で農地を保全したいという思いがある。
茶のポット苗移植機「茶レンジャー」(写真上)大苗移植機「茶レンジャー・アトム」(同下右、円内は堀口泰久さん)

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7月16日号(第2188号)
1面 食糧・農業・農村基本法が成立
 全会一致で「国会決議」
国内生産増大へ 
 食料・農業・農村基本法(新基本法)が十二日の参議院本会議で自民、民主、公明、社民、自由各党などの賛成多数で可決、成立した。採決に当たり「食料・農業・農村基本政策に関する決議案」が上程され、共産党を含む全会一致で採択された。政府は今後、第一五条に基づく「基本計画」の策定をはじめ財政措置、関連法案の早期成立など、施策の具体化に向けた動きを本格化させる。新基本法は七月十六日に公布・施行される。(2、3面に関連記事)

2面新基本法の意義と課題
  2氏に聞く
 新基本法(食料・農業・農村基本法)が十二日の参議院本会議で可決、成立した。食料・農業・農村基本問題調査会の部会長をつとめるなど、新基本法論議に深くかかわってきた荏開津典生千葉経済大学教授と、祖田修京都大学教捜の二人に話を聞いた。(編集部)
関係法制の見直しを 国民あげた努力必要
千葉経済大学教授
荏開津典生
えがいつ・ふみお
一九三五年(昭和十年)岐阜県生まれ。五九年東大農学部卒。経済企画庁勤霧を経て東大農学部助教授、八八年同教授。九六年退官し、同年四月から現職。主著に『飢餓と飽食』『心豊かなれ日本農業新論』など。
京都大学教授
相田修
そだ・おさむ
一九三九年(昭和十四年)島根県生まれ。六三年京都大学農学部卒。農林省経済局、京大、龍谷大学を経て九〇年から現職。中山間地域等直接支払い制度検討会座長。主著に『地方産業の思想と運動』『都市と農村の結合』『コメを考える』など。

修学旅行で農作業体験
兵庫・氷上高生 長野・臼田町へ
 緑野に真実求め40人
  22年続く 今年は野菜・花き産地で勉強
【長野】兵庫県立氷上高校(田中近衛校長)の生活科二年生四十人の長野県下での修学旅行を兼ねた農作業体験が六月十五日から一週間、行われた。氷上高校は「緑野に自己の真実を刻め」をモットーに、北海道で一九七五年から、長野県下で七七年から、「緑野」体験の修学旅行をしている。「緑野」体験者はこれまでに五千人を超えるという。
スプレーカーネーションの「ランデプー」に囲まれて、西山亜衣実さん(左)と野花かおりさん
1面手づくりのニンニク選別機
福井・上志比村 南保忠義さん
  高齢農家に助っ人 ムラの"業師"が開発
  既存部品の徹底利用 分別作業を完全自動化

 高齢者が支える産地に"助っ人"が出現した。福井県上志比村の南保忠義さん(72)は、特産のニンニクの収穫・選別の機械化に取り組んで成功、村内の生産者に喜ばれている。しかも、ほとんどの部品は周囲にあるもの。自転車のチェーンやコンバインのカッターが使われる。上志比村は県内のニンニク生産のほとんどを占めているだけに、関係者は産地維持に自信を深めている。
(上)ニンニク自動選別機。手前からニンニクの茎を下向きにのせ、茎を玉から7センチのところでカット、奥にいくにしたがってサイズが大くなる。(下)試作中のニンニク収穫機


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7月23日号(第2189号)
1面 株式会社形態導入 懸念払拭へ新たな措置
 農業生産法人制度検討会 最終報告まとめる
  企画管理労働を重視  農業委員会に監視の役割
 農業生産法人に株式会社形態を導入する際の懸念を払拭(しょく)するための措置などを検討していた農業生産法人制度検討会(座長=関谷俊作農政調査会会長)は十六日、第八回会合を開き最終報告をまとめた。農業生産法人の事業、構成員、役員の各要件を見直す具体的内容とその判断基準、見直しに伴う措置などを示した。耕作者主義が守られるかどうかで懸案となっていた役員要件では、現行制度で役員の過半としている「農作業の常時従事者」の割合をおおむね「四分の一超」に緩和することになった。見直しに伴う措置には、農地取得時の農業委員会による審査の充実や、地域での協議の場づくりなどが示された。今後は、農業委員会の機能強化を含めこれらの措置が確実に実行できるよう法制度を具体的にどう整備するかが課題になる。
農業生産法人制度見直しの内容
現行制度 見直しの内容 懸念払拭のための措置
法人形態 ・合名会社
・合資会社
・有限会社
・農事組合法人
株式会社形態を追加 株式譲渡について取締役会の承認を要する旨を定款で定めているものに限定
事業要件 ・農業・農業関連事業・附帯事業
農産物の加工、貯蔵、運搬、販売、農作業受託など
事業の範囲を拡大し、事業の産額は限定しない 法人の事業全体(売り上げ)の中で、農業(関連事業を含む)のウエートが過半を占めるようにする
構成員(社員)要件 ・農地の権利を提供した個人
・法人事業の常時従事者
・法人に現物出資した農地保有合理化法人、JA、JA連合会・産直契約を結んでいる消費者(個人)、ライセンス契約した種苗会社など
《※農業関係者以外の構成員は、総議決権(総出資額)の1/4以下、1構成員あたりで1/10以下》
・農業関係者以外の構成員に、法人が行う事業で、物資や役務で継続的な取引のある個人及び法人を迫加
・市町村も出資できるようにし、出資割合は制限しない
農業関係者以外の出資割合は、現行制度を維持
・農地取得時の申請書に記載する事項の追加など、審査の充実
・農委による法人からの報告徴収など、法人の状況の把握
・地域レベルでの協議の場づくり
・無断転用などの罰金額の引き上げの検討
・要件を欠くおそれのある場合や、欠いた場合の農委による指導
役員要件 ・役員の過半数は農作業の常時従事者(原則150日以上) ・役員の過半数は農業(関連事業を含む)に常時徒事する構成員で、さらにその過半数が農作業に徒事(この場合、農作業の程度を緩和)

2面MA米 過剰在庫の重荷に
  関税化で増加率抑えたものの 国内市場への影響を見る
輸入米の実績 4年間で約205万トン 持ち越し在庫 はぼ横ばいだが・・・
国産への影響 適正水準に″圧力" 次期交渉での対応 今後の米価を左右
 政府は四月から、コメの関税化に踏み切った。積み増しを義務づけられているミニマム・アクセス(MA、最低輸入量)の増加隔を半分に抑え、MA枠を超える輸入を高率の二次関税で防いでいく。二十一世紀への農政の枠組みをつくる「食料・農業・農村基本法」が成立、施行され、政府はこの理念を柱に世界貿易機関(WTO)次期交渉に臨む準備を進めている。すでにMA米はアメリカやタイなグラフ:ミニマムアクセス米どから九五〜九八年累計で二百五万一千トン輸入されている。では、MA米はどのように流通・活用されてきたのか。次期交渉を控え、その動向を追跡した。 ミニマム・アクセス米の需要量(96〜99米穀年度)
単位:万トン(玄米)
96 97 98 96〜98 99(計画)
輸入実蹟 43 51 60 154 (68)
需要量 12 43 57 112 (68)
加工用 12 28 19 59 -
援助用 - 12 34 46 -
主食用 - 3 4 7 -
持ち越し在庫量 31 39 42 - (10)
備蓄 - 10 10 - (10)
援助用 - 10 13 - -
飼料用備蓄 - 19 19 - -
弁当づくり高齢世帯に"愛の昼食便"20余年
群鳥県新田町の家庭料理友の会
 奉仕の輪広がる
  郷土の食材で郷土の味
 群馬県新田町の「家庭料理友の会」(丸山知栄会長)は、地域で給食サービスを行うボランティア・グループ。会員が交替で、新田町内に住む高齢者に、昼食を作り、無償で提供している。「地域の人に、地域の食材でつくった郷土の昧を」との思いで始まった活動は昨年、二十周年を迎えた。同会の活動をきっかけに、新たにボランティアの二グループが生まれるなど、家庭料理友の会は町に欠かせない存在となっている。
見事な手際、チームワークで給食ができあがっていく
1面全国稲作大会国際競争に勝つ経営へ
   鹿児島で全国稲作経営者現地研究会
    糸口探し質問相次ぐ
国内消費者をつかめ  松島氏
低価格米需要ふえる  八木氏
井手口氏  コメの価格変えず
蕨満氏   湛水直播に改良機

稲作大会 第二十四回全国稲作経営者現地研究会(主催=全国稲作経営者会議、九州・沖縄各県稲作経営者会議、全国農業会議所)が八〜九日、鹿児島県下で開かれた。全国から約三百人の稲作経営者らが集まった。コメの関税化から二か月が経過。参加者は基調講演、研究討議、現地視察を通して、国際競争に打ち勝つための稲作経営の展開方向を探った。
(上)コメの関税化移行後の稲作経営の展開方向を探った研究討議、(下)2日日の現地視察で直まきの水田を説明する蔵満久幸さん


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