丸本酒造 株式会社 ホームページ
なぜ農業に参入したのですか?
昔の佇まいを残す丸本酒造の建物
    日本酒の製造原価として、主原料の米の割合は概ね半分ぐらいを占めています。米価が政府によって決められていた時代は、酒造会社の大小にかかわらず、同じ酒米を同じ価格で入手することができました。
    しかし、米の流通が自由化されてくると、大手酒造会社は規模のメリットを活かして酒米を低価格で購入することができるようになります。中小規模の酒造会社は、栽培技術の違いや自社生産という価格以外の面での差別化で対抗するしかないのです。それで、農業参入を決意したのです。
どんな農業をしていますか?
鴨方町の水田
    平成元年には、個人名義の水田30a(3~4枚)を使用して、山田錦(酒米)の栽培を開始しました。その後、徐々に鴨方町で、個人名義の借地を増やしていきましたが、中山間地域で区画も小さいことからあまり効率がよいものではありませんでした。
    転機が訪れたのは、平成15年の「酒米栽培振興特区」の認定でした。鴨方町が、地権者から水田を借りて、丸本酒造に貸し付ける方式が取られたのです。個人名義だった農地も含めて、約3haを丸本酒造が耕作することになりました。それでも30枚以上に別れ、農業機械が自走で移動できないほどには点在したものでした。
    しかし、地道に耕作を続けてきた結果、近隣の矢掛町からの水田を借りられるようになります。平成21年の農地法改正以降は、解除条件付貸借の方式に移行しましたが、現在16haの水田を耕作するまでになったのです。矢掛町の水田は、30a~1ha区画で、3カ所程度にまとまっているため、作業効率があがりました。水路の溝掃除や草刈りなどの共同作業は地権者にお任せし、高いところで1万円の賃借料を払っています。
    丸本酒造の社員は、22人いますが、田植え、稲刈は総出で行い、他の管理作業(肥培管理、除草など)は、営農部長1人を含む2~3人でまわしています。栽培技術の習得には試行錯誤があって5年ほどかかりました。大きな誤りに気づいたのは、国税庁に勤務し、酒の専門家であった永谷正治先生との出会いのおかげでもありました。
    多肥で多収の米はタンパク質を多量に含んでいますが、酒造ではこのタンパク質を削ることになります。すなわち等級は高くとも、このような米はよい酒米ではないということなのです。
    こうして、永谷先生の三黄(さんおう)の稲づくり(定植前、出穂前、収穫前の窒素の施肥を抑制する)を取り入れていくことになりました。山田錦は原種に近いため、窒素過剰に弱く、この栽培方法に適しています。
どこに販売していますか?
有機JASの認定を取得した水田
    生産した酒米は、自社で100%使用しています。現在、丸本酒造で使用する酒米(山田錦とアケボノ)は年間約1500俵、そのうち約500俵が自社生産(約3分の1)です。自社生産している酒米は単価の高い山田錦がほとんどで、一部土地条件の悪い場所(1~2ha)に単価の低いアケボノを作付していますので、金額的には自社生産の割合はもっと大きくなります。
    製造した日本酒はほとんどが問屋や酒販店に販売されますが、一部消費者に直売することもあります。地域的には、岡山県内6割、県外2割、外国2割です。岡山県外の中心は東京で、高級なアイテムを百貨店向けに出荷しています。外国の販売先は、主にアメリカで、EUにも輸出しています。富裕層向けに、和食の普及とセットに販売しているのです。
    丸本酒造には有機JASの認定を受けている水田があり、その酒米を使用した日本酒が輸出の目玉となります。欧米では、オーガニックの評価が高いからです。しかし、日本では酒が有機JASの対象外であるため、アメリカとEUの認証を直接取得しなければならず、コスト的にも労力的にも負担となっています。
    国内的にも有機JASの認定を受けることには意味があります。自社栽培をしているというだけでは、流通業者や消費者には、特徴がわかりにくいからです。
取組の特徴や課題などを教えていただけますか?
    農業に参入するときの大きな課題は、農地と販路の確保です。丸本酒造では自社生産の酒米をもっと増やしていく方向なので、今後は30ha以上40haぐらいまでは農地を集積したいと考えています。
    農業機械は、中古で取得することが多く、トラクター4台、田植え機2台、コンバイン2台を所有しています。大型の農業機械の中古は、西日本では少ないので、今後規模拡大するときのネックになりそうです。
    農地の地価水準を考えると、100年は賃借できることから購入は考えていません。農地の貸借は、金額より出会いだと思います。信用を崩さないように我慢することも必要で、条件がよくない農地だからといってもすぐに返してはいけません。矢掛町で、水田を借りたときは住民票を移そうと考えたぐらいです。
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