天橋立ワイン株式会社 ホームページ
なぜ農業に参入したのですか?
積雪の中のブドウ園
日本三景の一つとして知られる天橋立ではありますが、観光だけでは、雇用が難しいのが現実です。有限会社たんごワイナリーによるブドウ生産は、智恩寺の参拝者をもてなす4軒の茶屋の1つとして、300年前から続く老舗旅館千歳の13代目社長が、天橋立の新たな特産品として、ワインに着眼したことから始まりました。
ワインは、味を楽しむだけではなく、その生い立ちを語ることが人と人とのコミュニケーションにつながります。この特産品をつくることが地域の発展につながるものと考えて、社長自ら北海道ワインに、ブドウ栽培・ワイン醸造の技術を学びにいき、ワイン事業を開始することになりました。
ワイン事業は、輸入と国内製造の2本立てが選択されました。輸入については、TSC株式会社を設立して、確かな品質をもった高級ワインを輸入・販売しています。一方で、国内製造については、地元を中心とした国産ブドウを原材料とした手ごろな価格で誰にでも楽しめるワインをコンセプトにしました。
国産ワインといっても、その原材料は海外から輸入していることが多いのが現状です。ワインの品質とブドウの産地は密接な関係にあることから、本当の日本のワインを製造することにこだわったのです。
どんな農業をしていますか?
天橋立を臨むブドウ園
原材料のブドウを確保するために、1991年に農業生産法人を設立しました。1998年には、栽培したブドウからの醸造を開始し、1999年には天橋立ワイン株式会社を設立しています。農業生産法人で、現在のワイナリーの周辺に約3haの農地を賃借しましたが、その後半分の約1.5haを購入しています。また、地目が水田であったため、土を入れて畑地として造成しました。最初は反対もありましたが、徐々に信頼を得てきています。
 海沿いの農地では、病気が発生しやすくブドウ栽培が難しいのが実情です。収穫時期が早い品種を作付していますが、8~9月に雨が多いと1週間で病気が蔓延して、2~3割減収することもあります。生分解性が高い農薬を使用していますが、防除は徹底して行わなければなりません。
 肥料については、牡蠣殻と堆肥を入れているだけです。牡蠣殻は、天橋立の廃棄物の有効利用で、植樹前は畑に敷いた上に土をかぶせていますが、植樹後は、畝間に敷くだけです。トラクターを使っているうちに、砕かれたり、土に埋まったりしていきます。堆肥は、近隣の畜産農家から購入していましたが、現在は綾部市の農家から購入しています。
品種の選定がもっとも重要であり、現在も新たな品種の導入に取り組んでいますが、木が育つまでに5年、醸造に2年、評価するのにさらに3年かかります。1つの品種の善し悪しを判断するために、少なくとも10年待たなければならないのです。
どこに販売していますか?
天橋立ワインの売店
ブドウは、すべて天橋立ワインで製造するワインの原材料になります。現在720mlビン換算で7万本の自社製造ワインを出荷していますが、概ねブドウ10tから1万本のワインが製造でき、ブドウの収量が1ha当たり10tであることから7haの農地が必要ということになります。
自社の3haを除く4haのうち約2ha分は、地元農家12戸との契約栽培で供給されています。残り約2ha分は、北海道ワイン関係の北海道や石川県能都町の生産者から、生ブドウの状態で購入しています。一般的には、果汁の状態で購入した方が流通コストを低減できるのですが、自社で生ブドウの状態から醸造するという方針を堅持しているのです。
醸造されたワインは、地元の小売店とグループ内の関連店舗で販売されています。大手量販店からの引き合いもありますが、ロットが小さく、総量も少ないため、現在の販路だけでほぼ完売してしまいます。
取組の特徴や課題などを教えていただけますか?
たんごワイナリーの直売所

今年度の売上は、約9千万円、5年で1億円が目標なので達成可能な状況になっています。農業生産だけでは、この売上は難しく、複合化することで成立すると考えています。 4年前に、京都府農業経営体育成事業で、2億円を投じて、レストラン、直売所、パン工房を併設した施設を、ワイナリーに隣接して建てました。農業生産法人全体では、22~23人の従事者がいて、農業に主に従事しているのは3人です。
 パン工房では、地元の米を大阪の業者に依頼して製粉し、米粉パンをつくっています。いずれは製粉も内部化したいと考えています。直売所では、地元の45戸の農家の農産物や加工品を中心に、京都府内の加工食品も扱っています。レストランでも、地元の農産物を中心としつつ、和洋折衷の特色あるメニュー作りをしており、その監修は、千歳の料理長が行っています。
天橋立ワインには、10万本の製造能力があるので、10haまでは国産ワイン用の農地を増やす余地があります。自社もしくは近隣の若い農業者が、約2haの外部からの購入分も含めて、この拡大分を生産できるようになるのが理想です。
 京丹後の国営農地を借りたこともあるのですが、獣害が多くて返しています。近隣の山地も借りましたが、霧が多く日照が不足していたため、こちらも返しています。農地を借りている方が低コストで生産できるのですが、安定的な生産を考えると、購入も視野に入れざるを得ません。
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