有限会社新家青果 ホームページ
なぜ農業に参入したのですか?
育苗中の有機玉ねぎ
有限会社新家青果は、玉ねぎを中心に取り扱う青果物の集荷業者です。新家社長は三代目となりますが、淡路島の玉ねぎ栽培面積がピーク時の半分まで減少している中で、夏場の出荷量が多い時期に玉ねぎを仕入れて保存し、出荷量が少なくなったときに卸す従来のやり方だけでは限界を感じるようになりました。
安全でおいしいものをつくることが、自社の特徴を出すことにつながると考えて、有機栽培にも取り組みました。おいしさは好みで多様ですが、安全・安心という点では、有機栽培は明確なブランドとして存在しています。
また、30a程度の面積で玉ねぎ栽培をする兼業農家が多いこの地域の中で、若い農業者が少し背伸びをすればできるであろう1~3haの規模で、採算がとれる農業を目指すことにしたのです。
平成13年から個人名義で農地の権利を取得して、玉ねぎの有機栽培を開始しましたが、平成19年には農業生産法人の要件を整え、認定農業者にもなりました。
どんな農業をしていますか?
糖度が高い「あまたまちゃん」
現在7.3haの農地を賃借して、うち5haに玉ねぎを作付しています。社員9人のうち2人が農業事業部に所属し、パート15人の一部と研修生6人が農作業を行います。
新家さんが自ら有機栽培に取り組んで気づいたことがあります。それは、作物の味を決める要因として、風土が1割、品種が3割、栽培が6割だということです。風土の違いがよく言われますが、最低限、栽培できる条件をクリアしていれば、大きな問題ではないと感じました。むしろ栽培で大きく変わってしまうということがわかったというのです。
有機栽培で育てた新家青果の玉ねぎは、淡路島産の他の玉ねぎと比べて、えぐみや辛みが少なく、各段に甘いものでした。新家さんは、この有機栽培で糖度を上げる技術を慣行栽培に応用することで、最低9度以上(現在の最高は15.7度)の糖度をもつ「あまたまちゃん」という商品を開発しました。「あまたまちゃん」であれば、有機栽培に取り組むだけの技術がない農家でもつくることができます。
現在、新家青果に出荷する農家は全体で250戸、うち有機栽培を行っている農家は数戸程度ですが、「あまたまちゃん」は50戸が生産しています。企業が農業に参入する意義として、このような研究・開発を担うこと、そして農家を育成することが重要であると考えています。
もう1つ慣行栽培の農家でも取り組めるブランドとして、「さらだちゃん」があります。「さらだちゃん」は、辛みが少なく、サラダで食べることができる5月の新玉ねぎです。 農家の栽培上の工夫に加え、新家青果で備えている氷感システムの冷蔵貯蔵庫を使用することで、本来は6月中旬頃までしか出荷できないこの新玉ねぎを、サラダで食べたくなる7~8月の暑い時期に出荷しているのです。
どこに販売していますか?
氷感システムの冷蔵貯蔵庫
農業参入する前の販路は市場出荷がほとんどでしたが、淡路島産の玉ねぎに限れば、現在は市場出荷2割、スーパー・生協等が5割、外食・加工3割の比率となっています。大手のスーパーマーケット等では、ブランド名を伏せて販売されている場合もあります。
新家青果で取り扱う淡路産玉ねぎのうち1割程度が自社で生産したものです。農業部門の実績は、他の農家と同様の仕入れ値で計算しています。有機栽培の玉ねぎは固定単価なので、収量が増えれば、所得が上がる計算です。慣行栽培並の収量がとれれば、採算がとれるようになっています。
しかしながら、現状では慣行栽培の3割減程度であり、新家青果でも横ばい、他の有機栽培をしている農家については、むしろ減少傾向にすらあります。今後の栽培技術の改善が必要です。
現在は、慣行栽培の玉ねぎ価格が高騰しているため、メリットが少ないのですが、新家さんは、固定単価の有機栽培や加工・業務用の玉ねぎをつくる方が望ましいと考えています。規格外のものも含めて収量さえあげるようにできれば、相場の当たりはずれに左右されることなく、利益をあげることができるからです。
取組の特徴や課題などを教えていただけますか?
冷蔵貯蔵庫から出した
玉ねぎを掲げる新家さん
国内は信頼関係で取引できるのですが、海外ではそれが容易には通用しません。輸出や輸入農産物との競争のために、GROBALGAPを取得しました。2020年の東京オリンピックの開催期間は7~8月、これは淡路島の玉ねぎの出荷時期と合致します。もちろんオリンピックは一時的なものなので、より長期的な視点でやっていかなければいけないのですが、海外にアピールできる一つのチャンスと考えています。
日本国内の市場は、今後に大きな期待をかけることはできない状況です。香港で生玉ねぎを販売してみたことがありますが、コスト面で課題がありました。食品加工の必要性を感じて、有機加工食品のJAS認定を取得し、ソテーオニオンの専用機械を設置するなど新たな取り組みを始めています。
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