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農政解説

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食農耕論 「恣意的」なTPP11と日EU・EPAの政府影響試算

東京大学大学院農学生命科学研究科教授 鈴木 宣弘

 政府の影響試算は国内対策の検討に使えるものではない。その前提は(1)価格下落以上に生産性が伸びる(2)下がるはずの賃金が逆に上がる(3)国内総生産(GDP)増加と同率で投資が増える――とどれも恣意(しい)的なドーピング薬で、効果がいくらでも水増しできる。まず、純粋に貿易自由化の直接効果だけをベースラインとして示し、その上で、生産性向上がこの程度あれば、このようになる可能性もあるという順序で示すのが、「丁寧・真摯(しんし)」な姿勢であろう。
 農林水産物も、価格が下がれば生産は減る。価格下落×生産減少量で生産の減少額を計算し、「これだけの影響があるから対策はこれだけ必要だ」の順で検討すべきなのを本末転倒にし、「影響がないように対策をとるから影響がない」と主張している。
 政府の影響試算の根本的問題は、農産物価格が10円下落しても差額補てんによって10円が相殺されるか、生産費が10円低下するから所得・生産量は不変とし、その根拠が示されていない点である。

 [2018-1-19]