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大臣賞受賞者の取り組み 推進委員が力発揮 各地で農地利用の最適化が活発に

 改正農業委員会法の施行から間もなく2年。農業委員会による「農地利用の最適化」が各地で活発になってきた。新たに農業委員会に加わった農地利用最適化推進委員は、農地の現況把握にとどまらず、地域の合意形成や農地の利用調整にも力を発揮している。2017年度の農業委員会表彰で農林水産大臣賞を受賞した3人の推進委員の活動を紹介する。

 茨城県桜川市農業委員会(稲葉則夫会長)の藤田恒男さん(69)は自ら旗振り役となって担当地区で説明会を開き、担い手や地権者への農地中間管理事業の周知に力を入れる。2016年度は42アール、2017年度は52アールを農地中間管理機構による集積・集約化につなげた他、30アールの貸し付けや72アールの売買も取りまとめるなどの成果を上げた。
 元銀行員の藤田さんは農業に関わった経験はほぼなく、農地利用の最適化が何かを知ることが出発点だった。研修会で積極的に質問するなどして情報や知識を得るうちにその必要性を実感。「せっかくいい制度があるのに知らない農家が多い」との思いが高じ、説明会を企画するに至った。
 説明会などでは、事前に県農林事務所や機構などに疑問点を問い合わせて解消した上で自作した資料を配布。分かりやすく丁寧に、利点だけでなく注意点もしっかり伝えるのがモットーだ。2016年度は2回で各50人、2017年度は1回で20人を超える人数が集まり、これをきっかけに個別の相談も寄せられるようになった。
 熱心な活動はこれにとどまらない。
 担当地区の農地の耕作者や地権者、地目などを1筆ごとに調べ、耕作放棄地も分かりやすく地図上で色分けした「基本図」を作って実態を把握。
 2017年度は独自のアンケートも実施して貸借や売買などの意向もつかみ、地域の話し合いなどで活用している。
 「地域の全体像が分かれば、次に何をすべきか見えてくる」と話す藤田さん。現在は地域の耕作放棄地の解消などを図るため、さらなる機構への集積を目指し働きかけているという。

写真上=「基本図」を作成して耕作者や農地の実態を把握した藤田さん

 昨年の本紙7月14日号で、地域から頼りにされる“スーパー推進委員”として紹介した新潟市中央農業委員会(神田利次会長)の虎澤栄三さん(63)。
 地域の農地集積・集約化に向けて積極的に行動を起こし、確実に成果を上げてきたことが高く評価されて、今回の受賞につながった。
 2016年4月に推進委員に就任するまでは、農業委員を11年間務め、農地関連事業にも詳しい虎澤さん。最初に農地集積・集約化に取り組んだのは農業委員時代の2015年で、自らが代表を務める農事組合法人あしぬまカントリーの営農拠点である亀田長潟地区でのことだった。
 「担い手の数が減る中で地域の農地を守っていくには、後継者世代が経営しやすい環境づくりも見据えた集積が必要」と提案。4回にわたる集落説明会で話をまとめあげ、同年の秋、地区内33ヘクタールの農地を農地中間管理事業を通じ、同法人を含む6経営体に集積した。
 これにより農地管理と経営の両面で集積・集約化のメリットを実感した虎澤さんは、担い手の高齢化や後継者不足に悩む近隣の地区にも積極的に働きかけるようになった。
 リーダー格の農家を訪問したり、地区の集まりに出席したりと、虎澤さんの労力を惜しまない姿勢と熱い説得はじわりじわりと関係者の心を動かし、2016年には上早通地区で23ヘクタール、2017年には茅野山地区で19ヘクタールの集積・集約化に結びつけた。
 「農地を守るのが農業委員会の仕事。そのために自ら動いて地域農家のやる気を引き出し、集積・集約化を進めるのが推進委員の役目」と虎澤さんは熱意をにじませる。

写真中=農地の集積・集約化で成果を上げる虎澤さん

 香川県三豊市農業委員会(堀江博会長)の西山勉さん(68)は、地元の山本町西ノ谷地区で農地を守る活動を続けている。地区担当の農業委員や推進委員、地域農業者、さらには地区住民まで巻き込んで、小さな農地の多い谷あいの集落を次の世代に引き継ごうとしている。
 地区には約10ヘクタールの農地があり、そのほとんどが集落営農組織に集約されている。現在地区の24戸が集落営農に参加。今後さらに7戸の加入が見込まれ、地域農業を支える最後のとりでとして存在感はますます大きくなっている。
 西山さんは集落営農立ち上げ時からの中心メンバー。発足前は地区の全戸に声をかけ、高齢化や後継者不足に一丸で立ち向かう必要性を訴えた。地区は「自分たちの地区から耕作放棄地は出さない。地区の農地は地区が守る」と西山さんの呼びかけに応えた。
 会長職務代理の正田茂義さん(70)は「土地持ち非農家などが増え、地域の合意形成は年々難しくなっている。西ノ谷の農業をずっと見守ってきた西山さんだからこそ地域が一つになったのだろう」と話す。
 山本町を担当するのは、農業委員4人と推進委員9人の13人。担当委員が全員集まる地区部会を毎月開き、農地の遊休化やマッチング、農地中間管理機構の活用状況などの情報をまめに共有する。
 西山さんは「集落営農の平均年齢は68歳。若い世代をどんどん巻き込みながら、今まで以上に一枚岩となって農地を守っていきたい」と力強く話す。

写真下=地域一丸の体制を作った西山さん、集落営農の代表・平川善久さん、正田さん(左から)

 [2018-3-23]