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存在感増す 人・農地プラン 農業委員会が積極的に関与

 地域の農地を誰がどのように使うのかを決める「人・農地プラン」の重要性が再認識されている。当初多かった助成金の受給を目的にした名ばかりのプランは減り、「地域農業の未来の設計図」として活用が進む。変化のきっかけは、高齢化による危機感や農地中間管理機構の創設だ。プランの策定に積極的に関与する農業委員会が増えてきたこともこの動きを後押しする。

 「以前はここまで具体的に地域で農業を話し合うことはなかった。それが、今では農地の問題だけでなく、何を作付けするのかまで相談するようになった。これこそが人・農地プランの一番の成果だ」。徳島県阿南市農業委員会の萩野敏則会長(71)は、プランがもたらしたのは「一体感」だと強調する。
 萩野会長の地元の中野島地区横見地域は、営農条件に恵まれた水田地帯。地域総出での水利作業など、地域の団結力はもともと強かった。それでも、プランの策定前は、高齢化や後継者不在、米価低迷などの問題が農業者個人にのし掛かり、地域の問題と考えられてはいなかった。
 萩野会長はこの状況に危機感を覚え、プランの始まった2012年度から策定に動き出した。市農林水産課や農業委員会事務局などと一緒に、地域の全農業者に声かけし、話し合いを主導。地域の農地利用を地域全体で考えるように呼びかけた。
 プランは3回の座談会を経て完成した。その後、中野島地区全体のプランに統合。この成功例が引き金になり、2013年度までに市内全地区(14地区)でプランが出来上がった。萩野会長が訴えた地域の共通認識が浸透した結果だ。
 農業委員は必ず地域の座談会に参加し、意見の取りまとめをリードした。時には、戸別訪問して、担い手や地権者に協力を求めた。萩野会長は「農業委員会は農業者の代表機関。こんな支援制度がある、あの人に農地を任せたらいいと相談に乗って、行政と農業者のパイプ役になることが必要だった」と話す。
 この思いは全委員が共有した。プランの策定前には、農業委員に対して制度の目的や策定の仕方、受けられる支援制度などを複数回研修。加えて、県や地方農政局などとの意見交換会も実施した。制度への理解を深め、現場と行政の両方の考えを知ることで、農業委員は地域リーダーの自覚を強くしていった。
 どのプランにも、中心経営体や担い手の状況、将来の農地利用、将来の農地の出し手、地域農業の在り方が記載された。後に機構の活用方針も追加。全てそろう、いわゆる「本格的なプラン」だ。市のプランは全て最低でも年に1回は見直しされ、人と農地の最新情報が地域で共有されている。
 こうした下地ができていたため、農地中間管理事業にもスムーズに取り組めた。2014〜2017年度の4年間で173ヘクタールを機構集積。これは県全体のほぼ半分を占める実績だ。本年度はさらに多くの地域が集積を進める見通しで、事務局は「プランの策定を通じて、集落で農地を守っていく機運が高まった」と太鼓判を押す。
 農水省によると、3月末までにプランを作成したのは1万5023地域(1587市町村)。この4分の3ほどの地域が昨年度中にプランの見直しを手がけ、担い手や農地の最新情報を更新した。
 プランの中で機構の活用方針を明らかにしているのは全体の84%(1万2677地域)。前年からは4ポイント上昇し、機構の活用が進んでいることを裏付けた。しかし、実際に機構への貸し付け希望があったのは39%(5927地域)にとどまった。
 プランの作成は、市町村の農政課などが担当している場合がほとんどで、そのため、農業委員会の参加が遅れた市町村もあった。プランがさらに効果を発揮するためには、地域を最も知る農業委員と推進委員の確実な参加や積極的なリードが欠かせない。地域の合意形成の証明となるプランは、「農地利用の最適化」の土台にもなるものだ。

写真説明=水田の維持にプランを活用する阿南市農業委員会(左から西尾和洋事務局長、萩野会長、大和孝道事務主任)

 [2018-8-24]