カテゴリータイトル

編集部の一推し

すべての記事を読む

農地と空き家セットに 下限面積引き下げ 5倍に急増

 不在地主の増加に伴い、管理者を失った農地や空き家。その解消と移住支援を一体的に進めるため、空き家とセットで農地を取得する際の下限面積要件(農地法3条)を引き下げる農業委員会が急増している。2017年4月時点で14件33市町村だったのに対し、1年半後の2018年10月には32道県153市町村と5倍近い。移住者にとってネックだった農地取得のハードルが下がり、本格的な就農に結びつく例も出始めた。

 兵庫県宍粟市では2016年度、市の空き家バンクに登録された物件に付随する農地を取得する場合に限り、下限面積要件を1アールに引き下げた。遊休農地対策に加え、「移住して農業を始めたい」という移住希望者の声が背景にある。
 農地付き物件をバンクに登録したい所有者は、空き家担当課と農業委員会にそれぞれ申請。農業委員会は現地調査で指定可能な農地かどうか確認し、総会での議決を経て下限面積1アール区域として地番ごとに指定する。利用権や農地中間管理権などが設定された農地や多面的機能支払交付金などの対象農地、荒廃農地などは指定しない。買い手や借り手が現れたら農地法3条による権利移動の許可申請を行い、手続きを進める。
 2018年11月末までに23件の農地付き物件がバンクに登録され、14件が制度を活用して成約。計31筆(1.06ヘクタール)の活用につながった。11件は市外からの移住だ。所有権移転による取得が多いという。

 石川県出身の中島秀志さん(51)は2年前、築120年を超える古民家と農地2アールを併せて取得し移住した。移住後は1年間にわたり近隣農家に手ほどきを受け、2018年には付近の農地22アールも借り受けた。現在は年間約60品目の野菜を無農薬にこだわり栽培。取得した古民家はカフェに改修した。育てた野菜はカフェで使う他、インターネットや地元直売所でも販売している。
 「来年からは米作りにも挑戦する。店と両立しつつ、チャンスがあれば面積を広げたい」と目を輝かせる中島さん。そんな姿に同市農業委員会の森本弘昭会長(75)は「意欲のある人が来てくれて心強い」と顔をほころばせる。
 山林が9割を占める同市では、特に山間部で農地の荒廃や空き家問題が深刻化している。一定の成約実績を上げているとはいえ、バンクに登録されている農地付き物件は氷山の一角にすぎない。
 森本会長は「10年後にはさらに耕作放棄地が増えるのは必至。移住の受け入れを一つの足がかりに、自治会単位などの地域一丸で解消していく必要がある」と強調する。今後は農業委員や農地利用最適化推進委員が地域との橋渡し役として関与することで、移住者の定着と農地の有効活用につなげていきたい考えだ。

写真説明=中島さん(右)と森本会長(再生した農地にて)

 [2019-2-15]