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農政解説

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農地と担い手 解決の道を探る 推進委員と農水省幹部が座談会

 農林水産大臣賞を受賞した3人の農地利用最適化推進委員は1月31日、大澤誠経営局長ら農水省幹部らと座談会を行った。地域の合意形成や担い手確保などの難題に立ち向かう推進委員活動の在るべき姿について、意見を交わした。

参加者(文中含め敬称略)
・木村 順(茨城県茨城町農業委員会)
・寺元久郎(岡山県津山市農業委員会)
・田中典雄(熊本県錦町農業委員会)
・大澤 誠(農水省経営局長)
・上田 弘(同大臣官房参事官・経営局)
・押切光弘(同経営局農地政策課長)
・渡辺安宣(同課調査官)
・杉原裕幸(同課経営専門官)
・柚木茂夫(全国農業会議所専務理事)
・稲垣照哉(同農地・組織対策部長)

 大澤 農地利用の最適化のためには、地域の話し合い、特に人・農地プランに本気で取り組む必要があると考えている。どうすれば地域の人たちに5年後、10年後の姿を考えてもらえるようになるか。
 田中 今耕作している人の多くは5年先には70歳を超えて、10年以上先には何人が残るのかという状況。それでも、まだできているから、余裕があるというか焦りがないように思う。
 寺元 本当にそう。4年ほど前の農業委員時代に10年後の地域を語る会を開催したのだが、やはり危機感がなかった。「今さら何かしても遅い」と言う人もいて、成功モデルを作らないと駄目なんだと痛感した。
 木村 うちの町では旧村単位でモデル地区を設定して、そこを出発点に農地中間管理機構を通じた集積を進めた。地区の全戸を戸別訪問して地権者の意向を聞き取り、約1.7ヘクタールの機構集積につなげた。
 上田 問題意識や危機意識が地域における議論を生むと思うが、こうした意識を持ってもらうにはどうしたら良いか。
 田中 小さいところからだんだんと広めていくしかないと思っている。農業委員と推進委員が意識を共有して、現場で理解を広めていくことが必要。
 寺元 個別の話し合いを深めて、地域の農業意識を高めることが求められている。自分の反省でもあるが、うちのような中山間地域を守れるのは農業しかないという感覚をもっと地域と共有しないといけない。
 木村 農業は環境や文化など地域全体に結びついているから、区長など地域リーダーに協力してもらうことも必要ではないか。

 渡辺 戸別訪問や話し合いの呼びかけなど、地域への働きかけでは、どのように工夫しているのか。
 木村 茨城町は面積が大きいので、体制移行の前から五つの旧村単位にJAなど関係機関も含めた地区協議会をつくって、農業委員が担当地区に責任を持っていた。こうした下地があり、モデル地区でも農業委員と推進委員が一緒に地権者などを訪問して、農地の集積・集約化に理解を求めた。
 寺元 私は定年帰農ということもあり、最初は呼びかけても誰も反応してくれないという状況だった。幸い父が役場の職員だったのでそこで少しずつ知ってもらい、行事にも参加した。戻って約10年、やっと通用するようになった。
 稲垣 地元の地区以外に出向く場合にはどんな準備をしているか。
 田中 信用がなければ現場には出て行けない。推進委員1年目は全国農業新聞などで他の推進委員の活動を勉強した。勉強したらそれをまず自分の地区でやってというように経験を蓄積した。やり方は同じなので、今度は他の地区でもできるようになる。新聞では、地区ごとに最適化を進めている事例が参考になった。
 上田 現場の活動では悩みや苦労があると思うが、推進委員同士ではどのように意見や情報を交換しているのか。
 木村 総会には推進委員も全員参加。加えて、全員協議会が毎月開かれるので、意識の統一がしやすい。地区協議会の方でも農業委員や他の推進委員と日常的に情報交換している。
 田中 錦町でも総会時に地区別に協議を行い、委員それぞれの活動内容や情報の共有を図っている。
 寺元 総会の前に地区ごとに集まり、意見交換や総会議案の調査の打ち合わせをしている。そこが同じような意識や認識を形成する場になっている。うちの地区では、それ以外に担い手にも参加してもらって毎月昼食会をしている。何でも話し合える環境をつくることは極めて重要だと思う。

 柚木 田中さんは農地を視覚的に把握するため、地図を自作されたという。どのように作ったのか。
 田中 自分の地区の今と将来を詳細に把握しようと各委員が地元で取り組んだ。事務局に出してもらった地図を利用状況別に色分け。その上で、全戸を回って、家族の構成や年齢、耕作状況、機械の保有状況、営農意向などを聞いた。やってみたら、地域の状況がよく分かった。
 柚木 木村さんは畑の集約時に問題となっていた境界線のくいでも解決に奔走した。
 木村 自分と農業委員が地権者の説得に回った。地権者と耕作者の相対の問題とせず、農業委員会が間に入ったので、地権者の理解が得られやすかったのだと思う。くいの再設置などの費用の半分を町が負担してくれたのも大きい。
 柚木 寺元さんの地元は中山間地域。担い手が不足しているのではないか。
 寺元 行き着く問題はまさにそこ。若い人に農業をしてもらいたいが、でもそれだけで生活できるのかということになる。米輸出や付加価値をつけた販売などの収益性を高める努力はしているが、まだ道半ば。そこで、定年退職者を農業に取り込める仕組みを制度化してもらいたい。
 木村 自分が高校卒業して就農した時は、夢を持って農業をしていた。今は寺元さんの言うように農業で食べていけるのかという所に行き着いてしまう。だからこそ、町全体で支援することが必要。農業委員会でも集まりの時は新規就農者にも来てもらって、話し合いが終わったら一緒に飲みに行くようにしている。地域に溶け込めるように周りが支えなくてはならない。
 田中 町では農業次世代人材投資資金の対象とならない後継者らへの助成を始めた。後継者が農業をやる後押しとなっている。
 上田 人がいないという危機感はこの場の全員が共有している問題。そのためにも、まずは地域で話し合って、農業委員と推進委員は汗をかいて、農地や担い手の問題に解決の道を切り開いてほしい。
 大澤 今回の農地中間管理事業の5年後見直しでは、人・農地プランをしっかりと作ってもらうということで、農業委員会の位置付けを明確にした。皆さんには全国の模範となるような推進委員活動を広めていってもらいたい。

写真01=座談会の様子

写真02=大澤局長

写真03=木村委員

写真04=寺元委員

写真05=田中委員

 [2019-2-22]