カテゴリータイトル

大地バックナンバー

すべての記事を読む

大地 多様な生態系保全に果たす農業の役割

 自然が、異変だ▼新型インフルエンザが流行しているが、ミツバチもウイルスの蔓延(まんえん)によって蜂群数が激減している。女王蜂への成長を止めるようなウイルスなど複数の病原によるのだという▼先般、知人から東京サンショウウオの保護活動の話を聞いた。サンショウウオは両生類で、今が産卵の時期だ。知人たちは卵を確認し、可能な限り持ち帰って、孵化(ふか)させ飼育し、それらをまた自然に帰している。しかし、個体数は減少する一方だ。東京都下のある丘陵地帯では、産卵個所が昨年は 300個所から、今年は30個所、10分の1に減ってしまったという。自然の中に放置しておくと、水辺や湿地がないため、干上がって卵のまま死んでしまう。持ち帰って、孵化させ飼育するのは、それを避けるためだ▼かつては、丘陵地の谷あいに谷地田があった。サンショウウオやカエルの産卵場所だった。ところが、その谷地田は、次々と放棄され、水のない荒地になっている。少しばかり水のある湿地帯も、何日か晴天がつづけば干上がってしまう▼自然の異変は、元をただせば、人為的な原因であることが多い。谷地田がなくなることで、東京サンショウウオも絶滅の危機の淵にある。多様な生態系を保全することも、農業の役割であり、「農業の基本価値」だ。大内力氏の訃報(ふほう)を聞いて、復刊本を読み返している。

 [2009-5-15]