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第8回耕作放棄地発生防止・解消活動表彰

 全国農業会議所と全国農業新聞が主催する「第8回耕作放棄地発生防止・解消活動表彰」の各賞が決定した。最高賞の農林水産大臣賞に輝いたのは、北海道雄武町の農業生産法人・(株)神門(石井弘道社長)。酪農地帯の同町でダッタンソバの新品種「満天きらり」の生産を軌道に乗せて新しい地域振興作物として定着させたほか、170ヘクタールという広大な耕作放棄地の再生農地でその生産に取り組み、大規模な解消につなげたことが高く評価された。

農水大臣賞 北海道雄武町 農業生産法人(株)神門 広大な耕作放棄地を解消
 2012年5月に同社を設立し、民間主体で耕作放棄地を利用した満天きらりの本格的な生産に踏み出すきっかけを作った人物は初代社長で故人の前町長だ。町長時代から町内に耕作放棄地が増える現状に胸を痛め、主産業の酪農も離農者が増えて厳しさを増すなか、耕作放棄地を活用して生産できる新たな地域振興作物を模索。寒冷地での生産が可能で苦みが少なく、加工もしやすいダッタンソバの新品種「満天きらり」にねらいをつけた。
 だが同社設立後すぐ、前町長は急逝。実弟の2代目(体調不良で辞任)に続いて、3代目の現社長を引き継ぐのが前町長と親交が深く、役場職員として同社の事業に関わっていた石井弘道さん(60)だ。
 「先人が切り開いた農地を何とか後世に残したいという前町長の強い思いを引き継ぎたかった」と話す。
 同社の経営農地は、林業の衰退と過疎化で10年前に集落が消滅した上幌内地区の耕作放棄地(約200ヘクタール)の解消と活用に重点を置いて、その面積を増やしてきた。国の再生交付金を活用し、既に同地区の160ヘクタールを解消。他地区の再生農地を含め、現在、経営面積は170ヘクタールを超える。粘土質で排水不良といった不利条件はあるが、暗きょ排水の設置などで改良を加える。
 生産部門は現在、7人が担当。5月下旬に作付けし、8月下旬から順次、収穫・乾燥・唐箕(とうみ)を行う。
 満天きらりは血圧安定効果の高いルチンが豊富なために、機能性食材としての注目も高い。そのニーズから既に複数の販売ルートを持ち、大手食品メーカーからの引き合いもあるという。
 一方、生産量が安定しないことが今一番の課題だ。気候条件に左右されやすく、昨年は台風の影響でおととしの半分の量(75トン)しか収穫ができなかった。そのため、玄ソバに付加価値を付けて収益を上げ、経営の安定を図ろうと、昨年からは新たに加工品づくりとその販売にも乗り出した。「製粉貯蔵施設をつくって製粉機を導入し、ソバ粉の加工販売を始めました。この1年のうちに地元食品業者と連携してソバ麺の加工販売も始めます」
 そのほか、自社商品と地域の特産品を販売し、飲食やソバ打ち体験などができる直売所の開設準備も進めている。
 石井社長が6次化まで事業規模を広げるのに積極的なのは、経営の安定化を図り、同社が地域内外の交流と若者の雇用の受け皿になって、ふるさとの活性化に貢献したい思いが強いためだ。今後の経営と地域活性化を見据え、同社設立を機にUターンした息子の啓介さん(28)も専務として経営に関わる。「若い人たちに経営を引き継ぐために、今は私が会社の土台づくりに奮闘するときなんです」と石井社長は意欲を燃やす。

農村振興局長賞 青森 弘前市農業委員会 担い手へ流動化し解消
 農村振興局長賞を受賞したのは「青森県弘前市農業委員会」(下山勇一会長)だ。農業委員による耕作放棄地の“直接解消”から地域の担い手への“流動化による解消”へと活動の方針転換を図ったことで着実に解消実績を積み上げてきた点が評価された。
 同委員会は山間部に広がる樹園地の耕作放棄地の解消を目的に2012年、「遊休農地有効活用促進委員会」を設置。当初は市単独事業を活用して農業委員自らによる解消に重点を置いたが、解消しても農地の借り手が見つからず、農業委員会だけが奮闘しても大きな実績は出せないと翌2013年、活動の方向性を流動化による解消対策へと切り替えた。
 新しい対策のなかで効果を上げたのが「農地活用支援隊」制度だ。地域事情に詳しく、再生農地の受け手となりうる農家や農業法人の構成員、JA職員の約190人を支援隊に委嘱。農業委員とともに農地の利用状況調査や農家の意向把握に取り組んでもらうと、従来よりも多くの情報が収集でき、担い手に対してスピーディーに最新の情報が提供できるようになった。
 これで支援隊のメンバーを含め、再生農地での規模拡大を検討する担い手の数が増加した。取り組みの結果、直近の3年間(2012年4月〜2015年3月)で84.4ヘクタールを解消。自己解消(38.2ヘクタール)のほか、重機の使用など大がかりな作業が必要な場合は国の再生交付金の活用(46.2ヘクタール)も働きかけて着実な解消につなげた。
 また作業の手間が大きい急傾斜の条件不利地(自作地)の保有が果樹農家の規模拡大の障害になっていることから、それらの非農地判定(2012年〜2014年、297ヘクタール)も積極的に進めている。非農地とすることで全部効率利用要件が満たされ、新たな農地集積を決める農家が出てきている。

写真上=広大な再生農地でダッタンソバ「満天きらり」を生産

写真下=遊休農地対策に取り組む農業委員と農地活用支援隊(弘前市農業委員会)

 [2016-4-22]