カテゴリータイトル

主張

すべての記事を読む

利用権の交換 農地集約へ担い手間の検討を

 古くは、天災や病虫害へのリスク分散で、農地を分散保有することに合理性があったとされる。時は移り変わり、いまは、農地利用の集積と集約が焦点になっている。
 定義はないが、一般に「集積」は特定の人や法人(経営体)に農地を集めること。「集約」は連坦(たん)化や団地化と同義で、経営体が利用する農地を一定の固まりにすることを指している。
 日本の一般的な技術体系の稲作では、基幹的従事者1人当たり10ヘクタールほどで生産コスト低減は頭打ちになる、と多くの専門家が指摘する。単に経営体へ農地が「集積」され、規模拡大が進んでも経営は効率化しないということだ。
 だが、農地が「集約」し、さらに1区画が拡大していけば、状況が変わることも指摘されている。多くの担い手が痛感していることだが、集約と区画拡大が経営上の鍵だ。
 これは稲作に限らない。野菜の大規模経営とICT活用で知られる宮崎県の新福青果。担い手が入り乱れ農地を分散利用する本社周辺の農場(100ヘクタール、都城市)と比べ、ほぼ二つの団地(22ヘクタール)に集約された西都市の農場は作業時間が大幅に短縮され、コストも2割ほど削減された。
 大規模な集約は、圃場整備や集落営農設立の場面が多いが、担い手間での農地の集約の機運も出てきた。滋賀県彦根市の薩摩地区では2015年、農地中間管理事業を活用し、担い手同士で32ヘクタールの利用権を交換して集約を図った。山形市農業委員会は1月、圃場の分散に悩む農業者の声を受けて「出作入作情報交換会」を開き、約20人の農業者が農地の交換を話し合った。
 利用権交換による集約は、投資なしに経営効率を高め、畦が抜ければ区画拡大につながる有効な手法。地域の農業者で検討する意義は大きい。実現には担い手間の調整や地権者の理解が欠かせず、農業委員会や行政、農地中間管理機構などの役割も重要だ。

 [2017-3-17]