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鳥獣被害対策 集落は集落で守る体制構築を

 年間176億円。これは2015年度の野生鳥獣による農作物被害額だ。2010年度の239億円からは4分の3以下になり、ここ3年は連続して減っている。一見、被害の抑え込みが成功しているようにみえる。
 だが、本当だろうか。イノシシやシカは山間部だけでなく、平野部にも出没範囲を広げ、これまで生息がなかった地域でも被害を出している。昨夏は東北地方を中心にクマの被害が多発した。現場の実感は「むしろ年々増えている」ではないだろうか。
 国の野生鳥獣対策が180度転換し、保護から管理へと軸足を移したのは2014年。前年に決めた「シカ・イノシシの生息数を10年後までに半減」という目標を達成するため、鳥獣保護法を鳥獣保護管理法へと改称し、捕獲対策の規制緩和を導入した。予算も増額。都道府県が主導する捕獲事業も始まった。
 それでも、鳥獣対策の実施主体はあくまで地域だ。地域住民が一体となって対策しなければ、学習能力のある野生鳥獣に対抗するのは難しい。被害に遭う農業者任せとなってしまっては、抜本的な解決には至らない。
 例えば、電気柵の設置では、周囲に見晴らしの効く緩衝帯を設けなければ、ほとんどの場合意味をなさない。柵の入りやすいところを野生鳥獣が見つける機会を与えてしまうためだ。緩衝帯を維持するためには、下草刈りや見回りが欠かせず、どうしてもマンパワーが必要になる。
 いかにして地域を巻き込んだ体制を構築するか。被害に遭う農業者や地域は、まずこのことから考えなくてはいけない。農村部であっても農作業をしない人が増えている近年は、活動に理解を得るのが難しくなっている。自治会などを中心にして、被害状況を丁寧に説明し、協力を求めていくことが肝心だ。「集落は集落で守る」というムラの団結が今こそ求められる。

 [2017-5-5]