人・農地プラン作成し実質化の活動をリード 三重・伊賀市農業委員会 農地利用最適化推進委員 福島正明さん

 三重県の北西部に位置する伊賀市では、人・農地プラン実質化に向けた取り組みを進め、現在24のプランが実質化されている。農業委員会でも農業委員24人、農地利用最適化推進委員56人が一丸となり、プラン作成に向けた話し合い活動などの取り組みを進めてきた。

中心経営体に貸し付けられた農地を前に福島さん

 同市山畑地区の農地利用最適化推進委員である福島正明さん(68)は、地域のリーダーとしてプラン実質化に向けた取り組みをけん引。2019年12月にプランを完成させ、現在、プランに基づき約6割の農地が担い手に集積されている。
 福島さんは17年に推進委員となり、現在2期目。就任当時のプランは複数地区にまたがる広域なプランだった。高齢化などにより離農者が増える中、「地区独自のプランを」との要望もあったことから、独自のプラン作成に取り組んだ。

 最初に行ったのが90戸の農地所有者へのアンケート調査。より詳細な意向を把握するため、独自のアンケート用紙を作成した。紙に農地の所在地一覧と耕作状況を記載し、5年以内、10年以内の営農意向を農地ごとに把握するようにした。特に5年以内の意向は1年単位で担い手に貸すか、農地中間管理事業活用の意向の有無も聞いた。
 アンケートは戸別訪問で行い、プラン作成の意義や農地中間管理事業のメリットなどを説明しながら回収。全農地約105ヘクタールの1筆ごとの貸し付け意向などを色分けした。
 話し合いは同地区の任意組織である「山畑農事実行組合」の会合の場を活用して進めた。結果、地区の認定農業者4経営体を中心に合計12人を中心経営体に位置づけた。また、地区を5地区に分け、中心経営体の耕作地も記載した詳細な地図を新たに作製。中心経営体に集まってもらい、どの農地が借り受け可能かの話し合いも進めた。

アンケート結果を基に作製した地図。
中心経営体別の耕作農地と出し手意向者の所有農地
が分かるように色分けしている

 借り受け可能となった農地は将来受け手が変わった場合でも対応がしやすいよう、農地中間管理事業の活用を勧めている。
 「農地所有者や担い手農家の考え方も変わってくる」(福島さん)ため、プラン完成後も毎年、アンケート調査と地図作製を行い、継続して中心経営体の話し合い活動を行っている。
 結果、毎年約4ヘクタールの農地が担い手に集積されている。地図化によりそれぞれの耕作状況が一目で分かるようになったため、担い手同士の耕作地の交換も進んできているという。
 また、機構集積協力金を活用して農道や水路の補修作業用にパワーショベルを購入し、地域の維持活動にも取り組んでいる。福島さんが機械メーカーに働きかけて同地区で講習会を開催するとともに、免許取得費用も一部助成し、希望者に貸し出しを行っている。
 福島さんは、「主な担い手となる認定農業者も法人化や後継者の確保が済み、安定した農業経営ができるようになった。今後、離農者も増加してくると思うが、プランを柱に地域農業の維持・発展に努めていきたい」と力を込める。