町独自の農地バンク制度を開始 兵庫・猪名川町農業委員会

 猪名川町農業委員会(大下章会長)では、今年4月に「猪名川町農地バンク制度」を開始した。借り受け希望者への農地のあっせんを円滑に行うため、県の農地中間管理機構とは別に町単独で設置した。

 同町は都市近郊に位置しながらも、約8割を山林が占める。農業振興地域の指定がない山裾の条件不利地などを中心に遊休農地が拡大している。一方、2018年に新名神高速道路の高槻・神戸区間が開通して大阪・神戸へのアクセスが容易になったことから、近年は就農希望者からの問い合わせも増えてきている。
 今年4月に同町が独自に開始した「猪名川町農地バンク制度」では、農地が荒廃・遊休化、またはその可能性がある農地所有者から登録申請があった場合、農業委員会が町のホームページ上で公開する。農地の「字」までの所在地、面積、地目、基盤整備の有無、接続道路・農業用水の状況、貸付期間や賃料・売買価格の希望、付帯施設や農機具の情報、水利・地域作業の条件などの情報が掲載される仕組みだ。
 登録できるのは市街化調整区域内の農地で、賃借権や特定農作業受託などの契約がないことや、不動産業者による取扱物件でないなどが条件となっている。農地パトロールや現地調査により農地としての利用ができないと同委員会が判断した土地も登録はできない。
 新規就農希望者や規模拡大を希望する農家が、公開された農地の情報を確認して同委員会に申し出ると、同委員会が農地所有者に伝達。その後は、借り受け希望者と土地所有者が連絡を取り合い、利用条件や賃料などを交渉してもらうこととしている。

制度が活用されて、農地の利用率向上に期待する大下会長

 今年の農地パトロール後、遊休農地所有者などを対象に行った利用意向調査の際に、同制度のパンフレットを同封したところ、町外の非農家や相続人などから多くの問い合わせがあった。10月6日現在の登録数は4.7ヘクタール(98筆)となっている。
 コロナ禍で食や農村への関心が高まっていることを背景に、町内外から農地に関する相談が増え、既に21筆約1ヘクタールの貸借のマッチングに至っている。
 「サラリーマンの定年延長や再雇用が広がり、定年帰農による親子間での農地・農業技術の引き継ぎが難しくなっていることが、荒廃の一因になっているように思う。登録された農地に借り手がつきやすいよう、まとまった一団の農地として貸し出せるように呼びかけていきたい」と大下会長は話す。