遊休農地と担い手のマッチングを事業化 福島・平田村農業委員会

種まきをする農業委員

 福島県中通り東部の阿武隈高原に位置する平田村。山並みを縫うように農地が広がり、畜産業と稲作を中心に野菜の栽培も盛んな地域だ。同村農業委員会(村上信一会長、農業委員8人、農地利用最適化推進委員12人)では、増えつつある遊休農地と担い手のマッチングを事業化し、遊休農地の解消に取り組んでいる。

解消後の農地

 同村では、主要作物であった葉タバコ栽培農家の減少に伴い、これらの畑が遊休化していった。これにより主要な道路沿いなどでも景観を阻害する遊休農地が目につくようになるとともに、猪などの有害鳥獣の被害が周辺の優良農地へも拡大した。
 この課題を解決できないかと検討を重ねる中、2016年に農業委員会が遊休農地に景観作物のヒマワリを植栽。保全管理を行いながら担い手と農地をマッチングする取り組みを事業化した。2018年6月には小平地区、蓬田地区の遊休農地55アールで事業を開始。除草や耕運などの再生作業は地元の農業委員が自ら行い、ヒマワリの植栽は委員総出で行うなど、農業委員が主導して事業を運営している。

遊休農地解消モデルを示す看板

住民から感謝の声

 見事に咲いたヒマワリを見た地域住民からは感謝の言葉が数多く寄せられた。これが農業委員の活動に対する意識の向上にもつながったという。2021年にはヒマワリを植栽していた蓬田地区の田20アールを農業委員が自ら借り受け。やせた土地でもよく育つソバの栽培を始め、営農再開への道筋を示している。

 2018年度の取り組みで採取されたヒマワリの種は、2021年度の播種用に使用。循環的に事業が行われている。また、ヒマワリの種を地域住民や「地域おこし協力隊」にも配布し、公民館周辺や個人宅の庭に植栽してもらうなど、農業委員と地域が一体となった活動が運営されている。

新たな作物選定中

 同委員会事務局の大竹健仁主査兼農林管理係長は「委員の活動を地域住民に見てもらい、手本となってもらいたい。その後に農業委員の活動が地域に浸透していけばうれしい。今後は手入れに手間のかかるヒマワリ以外の作物を植えたいと考えているので、より保全管理しやすい作物の選定に努めていきたい」と話す。

 同委員会では、昨年秋にナタネの種子を試験的に植えるなど、ヒマワリよりも効率の良い保全管理の作物選定に努めている。