農地を活かし 担い手を応援する 耕作放棄地でソバ作り 富山・氷見市農業委員会

 富山県の氷見市農業委員会(藤林久一会長)が始めた耕作放棄地でのソバ作りが16年目を迎えた。年々増加する耕作放棄地の解消対策の一環として始まったこの取り組みは、地元の子どもらの参加を得ており、食育の役割も果たしている。

 氷見市農業委員会では、積極的に農地パトロールを実施してきたが、耕作放棄地の解消を呼びかけるだけでは成果は少なく、また、解消への理解と協力が得にくいとの意見が出されたことから、実践活動として、ソバ作りが2000年に決定された。
 この取り組みを実践するためには、農業委員だけで行っても十分なPR効果は得られない。継続して実施していくには地域住民の理解と協力が不可欠だ。また、農業そのものや地元農産物への理解を深めてもらいたいと考え、初年度から実施地区の児童や幼児に播種、刈り取り、脱穀の作業を体験してもらっている。
 実施箇所は、市内を4ブロックに分けて、地域内の耕作放棄地を巡回し、毎年10アールを目途に選定している。除れき、耕起、除草などの管理作業は地元委員が主体となって行っている。また、この活動で再生された農地については、農業委員が耕作者を探して耕作放棄地に戻らないようにしている。さらに、ソバ作り以外にも、委員自ら耕作放棄地を借りてスナゴケ栽培に取り組み面積拡大している事例や、共同でハトムギ栽培に取り組んでいる事例があるほか、遊休農地も含めてマコモタケ栽培に取り組む事例など、徐々にではあるが耕作放棄地の解消が進みつつある。
 この取り組みで収穫したソバは、今年も藤林会長らが講師となって子どもらのそば打ち体験に使うほか、藤林会長ら7人の農業委員が、小学校(非体験校1校を含む)や市内の老人介護施設を訪問し、そばを打ち、提供される。
 「農作業体験やそば打ち体験は、子どもたちからいつも好評を博しており、食育の観点からも期待されている。この活動での解消面積は少ないかもしれないが、耕作放棄地の解消をPRしていきたい」と藤林会長は話す。

写真上=藤林久一会長

写真中=収穫したソバの脱穀作業に汗を流す氷見市の子どもたち

写真下=藤林会長はじめ農業委員が講師となって行う「そば打ち体験」を楽しむ子どもたち