豊かな田園風景を次世代へ受け渡す 栃木・上三川町農業委員会

上三川町農業委員会(石濱文伯会長)は、「地域農業の未来設計図(地域計画)」を作成している。豊かな田園風景を次世代へ受け渡すため、農業委員と農地利用最適化推進委員主導で地域座談会を進める。

地域座談会の様子。委員から地元への呼びかけは半年かけて行った

 2022年6月、農業委員会事務局と農政課が連携し、両委員に地域計画と目標地図の作成について説明することから取り組みが始まった。
 まずは「現状を知ること」を目標に同年7月、意向把握調査を開始。調査票の郵送と同時に、委員が1人当たり月4~5件のペースで農地耕作者に直接聞き取る方法で行い、対象1224件のうち1176件(96%)の回答を得られた。この結果、10年後には約半数の農家が農業をやめる意向があること、146世帯の農家が規模拡大を考えていることなどが分かった。
 また座談会の進め方や参加者の集め方を学び、委員の役割を明確にしようと23年10月から今年2月にかけて、全国農業会議所の澤畑佳夫専門相談員を講師に招き、全5回のファシリテーション研修会を実施。研修会では模擬座談会を開き、地元の高校生など農業者以外の人も集め経験を積み、本番前に好感触を得た。
 その後、先行して12地区中3地区の地域座談会を計画した。
 まずは認定農業者や自治会長を訪問し、農業委員自ら協力を呼びかけた。
 座談会は、農業者や自治会など地元住民ら60人以上が集まり、10年後の地域農業の将来像とその実現方法についてアイデアを出し合った。ファシリテーターを農政課職員が務め、各テーブルに両委員を1人ずつ配置して話し合いを円滑に進める体制を整えた。両委員たちは研修会で学んだ技術を活かし、参加者全員が意見を言えるような雰囲気を作った。また、野菜を持参して配るなど、座談会を盛り上げようと積極的に動いた。
 参加者からは「将来の農業の在り方を楽しく意見交換した時間が明日の励みなる。農業委員、推進委員が動いてくれたからこんな座談会ができた。本当によく動いていると思う」と前向きな声があがった。

参加を呼びかける地域座談会のチラシ

 現在は委員たちが座談会の開催を提案するほど積極的で、地元住民にも農業委員会の活動が浸透している。
 今後は6~8月にかけて残りの9地区でそれぞれ2回の座談会を実施予定で、すでに40人以上の参加報告があった地区もあるという。
 農業委員会と農政課は「地域座談会は本年度で終わらず、次につながる会をめざしている。地元農業者から多くの声をあげてほしい」と期待を込める。