農地を活かし担い手を応援する 宮崎・高原町農業委員会

相続未登記農地の調査 農委会が一元的に実施

 宮崎県の中央西部に位置し、「天孫降臨」神話で名高い霧島連山の霊峰「高千穂峰」を望む高原町は、農畜産業が基幹産業の地域。高原町農業委員会(重信喜一郎会長、66)では、これまで農政畜産課と農業委員会がそれぞれで行っていた相続未登記農地の相続関係調査を農業委員会に一本化することで、事務を効率化している。

 既に国土調査が終了している高原町では、農地の筆界問題はほとんど発生しない。だが、相続未登記や所有者が居所不明などの所有権が明確でない農地で、担い手への農地集積、売買などに支障が発生する事案が散見されていた。
 このような中、2014年度に設置された農地中間管理機構を通じての農地の賃貸借の事務で相続関係調査が必要な農政畜産課と、農地法に基づく利用状況調査による耕作放棄地対策などの相続未登記農地の調査が必要な農業委員会の事務で重複する部分があった。この事務の効率化を含めた改善が求められていた。
 そこで、農政畜産課と農業委員会が協議して、農業委員会でこれまで嘱託登記を行ってきた経緯もあるため、2015年度から機構集積支援事業関係の農地で相続関係の調査が必要な部分も含めて、一括して農業委員会が調査することになった。
 その結果、相続調査が重複することがなくなった。機構集積支援事業をはじめとした各種農地対策にも、農政畜産課と農業委員会が連携して取り組む意識が強くなり、円滑に事務が推進されている。
 また、利用状況調査において相続未登記で耕作放棄地とされていた農地が、農地中間管理機構を通じて賃貸借へと結びつき、耕作放棄地を解消した事例も出ている。
 事務が煩雑な「相続関係調査」を農業委員会で一括して行い、農政畜産課との情報共有化によって、未相続農地の農地中間管理機構を通じた農地の賃貸借の円滑化につながっている。農地中間管理機構を通じた農地集積事務でも、農政サイドと農業委員会サイドの垣根を越え、連携して事業が推進されている。
 同農業委員会の内村宗則事務局長は「今後も農業委員会で一括して調査することで、効率化と確実な事務処理を進めていく。今後想定される担当者の異動などが生じた場合も、円滑な対応が図れるよう『相続調査事務のマニュアル』も整備していきたい」と業務の推進に余念がない。

写真上=重信喜一郎会長

写真下=遊休農地の現地調査を行う農業委員