荒廃農地再生しブランド農産物栽培 神奈川・相模原市農業委員会

 相模原市農業委員会(阿部健会長、農業委員19人、農地利用最適化推進委員19人)は、2011年度から「農地再生モデル事業」を進めている。農業者の高齢化や担い手不足などにより荒れてしまっている農地を再生してブランド農産物を栽培し、新たな担い手へ引き継いでいる。

津久井在来大豆の加工品

 相模原市は、神奈川県北西部に位置する政令指定都市。市街地は日常生活に必要な都市機能が充実し、中山間地域では山や川、五つのダム湖など豊かな自然に恵まれる。それらの環境を生かし、「ブランド化推進品目」の農産物として、ヤマトイモや津久井在来大豆を生産するなど農業も活発。特に津久井在来大豆は、JA神奈川つくいと大手コンビニがドーナツやプリンなど特徴を生かした商品を販売するなど力を入れている。
 同市農業委員会で取り組む農地再生モデル事業では農業委員と推進委員が中心となり、荒廃農地の草刈りや土壌改良など、農地の整備を行ってきた。11年から始めた津久井地域内の緑区青根地区では荒れていた棚田約1300平方㍍を再生。農業委員・推進委員らが、田植えから稲刈りまでを行い、復元した。後に新規就農者などにそれらの農地をあっせんしている。
 また、22年度からは、津久井地域の緑区鳥屋地区の圃場約12000平方㍍を再生。委員が協力し合い種播きや草刈り、電気柵の補修作業などを進め、津久井在来大豆の栽培に取り組んでいる。
 収穫した津久井在来大豆は、学校給食へ食材提供するほか、加工した納豆やきなこは、大学生等への食材支援として提供することを予定している。

※津久井在来大豆=古くから同市緑区千木良周辺で栽培されていた大豆で、甘みが強く粒が大きいのが特徴。生産量の希少さから「幻の大豆」と呼ばれている。

委員が協力して種播き(写真上)や電気柵の補修(写真下)を進める

 同市農業委員会では今後も「農地再生モデル事業」に取り組み、遊休農地の発生防止・解消や担い手への農地のあっせんを進めていく方針だ。それとともに、子どもたちへの食育活動や津久井在来大豆をはじめとする地場農産物の地産地消の推進に向けて活動していく。
 農業委員会の菱山喜章副会長は「中山間地域は鳥獣被害が多く、担い手を確保するのが難しいが、今後もこの事業を通じて農地の有効利用につなげていきたい」と語る。