農地利用の最適化最前線(1) 区画拡大して作業効率の向上実感 埼玉・加須市農業委員会

 埼玉県加須市で農地中間管理機構を活用した農地の区画拡大が進んでいる。同市農業委員会(小倉和夫会長)と同県農地中間管理機構(同県農林公社)がともに地域の合意形成に取り組んだ結果、昨年度末までに886.5ヘクタールの農地が機構を通じて集積された。10アール区画が多かった圃場は畦畔を取り払って50アール平均に拡大し、作業効率は大きく改善した。
 「みんな言うよ、草刈り一つとっても全然違うって。3割は作業効率が上がったんだ」。担い手でもある小倉会長(66)はにこやかに話す。同市は県内有数の水田単作地帯ながら、区画が小さいのが悩みだった。2014年産の米価暴落以降、この悩みは危機感にまで高まる。そんな時にできたのが機構だった。
 機構のコーディネーターの高橋美恵子さんが地域の代表者に働きかけ、その後は地区代表の農業委員や農地利用最適化推進委員と一緒に説明会を開催。「簡易な圃場整備を同時に行い、将来に引き継げる基盤を作っていこう」と農業者に呼びかけた。
 合意形成が最も早かったのは北川辺地域の駒場地区。農地中間管理事業が始まった初年度に地区内の農地(27ヘクタール)のほとんどを機構を通じて集積した。簡易な圃場整備に助成する農地耕作条件改善事業を使い、農業者や地権者の負担ゼロで100本以上の畦畔を取り払った。工事は機構が直接行い、1区画は5倍の50アールに拡大した。この成功例が他地区にも波及していった。
 小倉会長の地元の北高野地区は2016年度に実施した。小倉会長は集積のために発足した協議会の会長に就任し、地域への説明や意向確認の戸別訪問、共通の賃料設定に奔走した。こうして地区内農地の95%(46ヘクタール)が機構への貸し付けに同意。地区全体で集積と区画拡大が実現した。
 小倉会長は高橋コーディーネーターと二人三脚で地域の悩み解決に当たった。「手間はかかるが、合意形成は丁寧に農業者の理解を得ていくことが大事。それでもうちは集積と圃場整備をセットで進めたので理解を得やすかった」と当時を振り返る。
 現在話し合いが最終段階に来ているのが水深地域の北辻地区。地区の80%(40ヘクタール)をまとめて機構に貸し出す予定だ。農業委員の田島啓司さん(68)と推進委員の佐久間尉匡さん(55)は地区の集まりに出席するなどして、集積を呼びかけた。田島さんは「農地利用は今だけでなく、5年先、10年先を考えなければならない」と思いを話す。
 公社の山岸典夫・農業振興局長(56)は「事業の説明は機構と県農林振興センターで行うが、地域の合意を図るには地元の農業委員さんや推進委員さんに回ってもらうことが重要だ」と指摘する。

写真説明=「機構集積は地域の農地の在り方を考える機会になった」と小倉会長