農地利用の最適化最前線(2) 早期対応心がけ遊休農地ゼロ維持 福島・湯川村農業委員会

 福島県の湯川村農業委員会(鈴木光雄会長)では遊休農地予備軍の段階での対策に力を注ぐ。農業委員と農地利用最適化推進委員が連携した戸別訪問など、現場活動にも精力的だ。農地利用の意向を早期に把握しつつ、農業委員会活動の見える化につなげている。
 会津盆地の中央部にあり「会津のへそ」とも呼ばれる同村。全農地の9割を田が占める県内有数の米産地だが、一方で1枚の面積が小さく基盤整備が進んでいない畑が特に不耕作地になりやすいという問題がある。
 農業委員会ではその前に手を打つため、各地区担当の農業委員と推進委員が2人一組となり、日常的に農地を点検している。荒れそうな農地があったら地権者に相談し、集落の担い手にあっせんするなどして耕作者を探す。鈴木会長(69)も昨年11月に約10アールの不耕作地を引き受け、水田へとよみがえらせた。本年度は農業委員が住民に働きかけて多面的機能支払交付金を活用し、草が生い茂っていた畑にヒマワリを植えて解消した例もある。
 毎年8月には全委員が集まり、半日かけて村全体の農地をパトロール。毎月の定例会議で問題があると指摘された農地を重点的に見回る他、不耕作地の改善経過も確認する。こうした対策の積み重ねにより、村では長年にわたり遊休農地ゼロを維持してきた。不耕作地は現在7ヘクタールほどだが、作付けはしていなくても草刈りや耕運で荒廃を防いでいる。
 今年1月末からは独自の意向調査に乗り出した。農業委員と推進委員のペアが担当地区の農家全戸を訪問し、3年後や10年後に農地をどうするか直接聴き取る。貸借などの希望を早めに掘り起こし、次の対策に確実につなげる狙いだ。鈴木会長は「不耕作地解消のためにも情報収集は欠かせない。新体制への移行を弾みに、今まで以上に現場に密着していきたい」と力を込める。
 委員の存在をアピールする目的も大きい。訪問時には農業委員会の業務を紹介するパンフレットも渡し、いざ悩みができた時に相談してもらうよう周知している。会長職務代理の廣川文夫さん(62)は「まずは地域の顔となる委員を知ってもらわないと十分な活動はできない。今までこちらから出向く機会はなかったので、今回の調査はかなり画期的」と話す。今後は早期の調査完了を目指し、取り組みを加速していく。
 7月には将来的な担い手の高齢化や後継者不足などを見据え、村と地元JAが共同出資で農業法人「(株)会津湯川ファーム」を設立した。新たな農地の受け皿の誕生に、農業委員会でも活動強化に気合が入る。

写真説明=「日頃の現場活動が重要」と口をそろえる鈴木会長(左)と廣川さん