中山間地域 農業委員会の挑戦(5) 話し合いリードし農業を活性化 石川・七尾市農業委員会

 石川県の七尾市農業委員会(坂井助光会長)では、農地利用最適化推進委員の村田正明さん(70)が農地集積の話し合いをリードし、地域農業の活性化に成果を上げている。
 村田さんが農地集積に尽力したのは、七尾市中島町の釶打地区。市町村合併前の旧中島町10集落(北免田、上畠、町屋、鳥越、西谷内、古江、藤瀬、河内、別所、大平)で構成される、地区面積27平方キロ、能登半島中部に位置する中山間地である。
 同地区では、1992年に「10集落はひとつ」を掲げ、互いに地区の現状などを話し合う「釶打ふるさとづくり協議会」を発足させたが、高齢化や人口減少はその後も進行し、2008年から2009年の2カ年で地域の現状を再検討することとなった。
 住民間での話し合いを経て、同地区では農業振興が基本との考えを再確認。1地区1農場型の農業を目指すことになった。
 2011年から始まった各集落での本格的な協議は、年20回以上開かれ、3年以上の時間を要した所もあった。そのほぼ全ての協議に村田さんは参加し、各地で農地集積の必要性を伝えてきた。
 最終的に7集落(北免田、上畠、町屋、鳥越、西谷内、古江、藤瀬)が参加する「7集落1農場型」とすることを決定。2015年には地域農業の担い手となる「(農)なたうち」を設立し、代表理事に村田さんが就任した。
 その後も農地中間管理機構を通じて農地集積に向けた話し合いを進めた結果、200以上あった兼業農家らの農地がまとまり、効率性が大幅アップ。具体的には、2016年に4集落(北免田、上畠、町屋、鳥越)で地区農地の83%、54ヘクタールが、2017年には3集落(西谷内、藤瀬、古江)で66%、46ヘクタールが集積された。
 併せて土地改良の事業も進めた。上畠地区内で9ヘクタール、66枚あった水田が16枚となり、北免田では400枚以上の水田が約100枚までに集約された。
 村田さんは「農地集積は地域の存続に絶対に必要なものだった。土地改良事業も進んでおり、以前は平均15アールだった農地が50アールにまで拡大した。生産効率も格段にアップしている」と話す。生産したコメのブランド化も進め、さらなる活性化につなげている。
 村田さんはこれまでの経験を生かして、他の地域でも研修会の講師を務め、農地集積の重要性を訴えている。
 なたうちは今後、さらなる農地集積に取り組み、最終的には100ヘクタールを耕作する予定だ。
 「今のままでは現状維持で手いっぱい。若い人に参加してもらわなければ、本当に大変なことになる」と村田さんは今後を見据える。

写真説明=地域の未来を見据え、農地集積に尽力する村田さん