中山間地域 農業委員会の挑戦(7) 山間部では法人と課題を検討 新潟・魚沼市農業委員会

 新潟県の魚沼市農業委員会(上村喜久雄会長)は独自に地区部会を設置し、地域で異なる課題に対応している。農業委員と農地利用最適化推進委員が旧町村単位の部会で協力する体制を確立。地域農業者の相談窓口や集落内の意思疎通を円滑にする役割も果たしている。
 上村会長(66)は「部会を設置したことで農業者から見えやすくなり、委員も活動しやすくなった」と話す。委員会は昨年7月の新体制への移行を機に、四つの地区部会を編成。43人の全委員が部会に入り、各地域で一体となって、地域の問題を解決するために部会ごとに活動する。
 以前は農業委員一人一人が担当地域を持ち、地区内の相談や調整に1人であたっていた。しかし、個人では経験や知識が限られ、特に任期が浅い委員は相談されてもすぐに対応できないこともあった。部会ができてからは委員同士で話し合う環境ができ、ベテランの経験を共有できるようになった。こうした体制によって、農業者からの相談が増えたという。
 集落の現状を把握し、将来を考えることも部会の役割だ。市内で最も山間部の第4地区部会(守門・入広瀬地域)では、地区内に二つある法人に農地が集積されている。同部会では地域の農業の将来を考えるには担い手の現状や意向を把握することが不可欠と考え、2法人との意見交換会をこれまでに2回実施した。その結果、人手が足りずに管理が難しい圃場があることが分かった。部会は冬にも意見交換会を開き、法人とともに解決策を検討する考えだ。
 上村会長は「厳しい状況だが、意見交換があったから分かったこと。法人が管理しきれない圃場は、地権者とも話し合って対策を考えていきたい」と話す。
 同地区は棚田で特産の魚沼コシヒカリ作りが盛んだ。山の斜面に分散した圃場は管理に手間がかかり、離農者や耕作放棄地の増加が進んでいる。担い手の不足も課題。しかし、農地の集積で農業に携わる人が減ると、雪解け水を山から圃場に引く水路の管理で人手が不足するなど、山間地域特有の悩みもある。草刈りや泥上げの作業の参加者が減り続ければ設備を維持できず、たとえ担い手がいても農業を続けるのが難しくなる。
 事務局は「第4地区は課題や苦労が多い。それでも部会は懸命に地域の農業のあり方を模索してくれている」と話す。

写真説明=第4地区部会のメンバー(右から桜井誠農業委員、小西正春会長職務代理、上村会長、穴沢健一推進委員、大竹秀吉推進委員、佐藤勝永推進委員)