中山間地域 農業委員会の挑戦(8) モデル地区を設定し集積 鹿児島・湧水町農業委員会

 中山間地域にある鹿児島県の湧水町農業委員会(重村耕一郎会長)が、町内の全14地区に設けたモデル地区で山積する課題に立ち向かっている。モデル地区は各10ヘクタールほど。農業委員と農地利用最適化推進委員は農家への戸別訪問による利用意向調査を実施しながら、詳細な農地図も作成した。委員会ではこの取り組みを町全体に広げようとしている。
 モデル地区は農業委員と推進委員の地元など、集積が進みやすい地域を中心に設定。重村会長(72)は取り組みのきっかけを「昨年8月の体制移行に伴い、どうすれば推進委員が機能するか考えた結果」と話す。
 利用意向調査は両委員が2人一組で実施した。5〜10年後の農地の利用意向を中心に、利用権設定の状況や農地中間管理機構への貸し付け希望を聞いた。貸し付け希望者には両委員が農地中間管理事業を説明。そのかいあって、約52ヘクタールを機構集積した。
 モデル地区とはいえ、調査対象はかなりの数になった。全地区を合わせると、680戸を訪問した。対象農地は199.4ヘクタール(1395筆)にもなった。
 今年5月には農家の意向把握とともに、農地図も作成。モデル地区内の耕作者を年代別に色分けした年齢別分布図と、耕作規模順に色分けした多筆耕作者分布図だ。数年後に耕作が難しくなる場所と、現在、担い手が耕作している場所が一目で分かるようになり、集積計画が立てやすくなった。
 町内でも基盤整備が進んでいる川添地区では、委員の粘り強い呼びかけによって、モデル地区17.7ヘクタールのうち15ヘクタールを機構を通じて集積した。農業委員の桑原佐年さん(71)は「モデル地区を作ったことで、集積の範囲が決まり、うまく進んだ。来年以降はこの流れがモデル地区以外にも自然と派生するのではないか」と期待する。
 桑原さんは推進委員の森山利秋さん(69)と協力して、83戸を回った。来年度以降の3年間で、地域の全水田がモデル地区になる予定だ。桑原さんの予想では10年後には地域の担い手3人に農地が集積する。桑原さんらは集積と合わせ、集約も呼びかけている。
 同町は山間部にあり、畑地も多いため、農地の集積は簡単には進まない。町では全国的にも珍しいアーモンドの産地化を目指していて、山間部の遊休農地に作付けを進めている。重村会長は「優良農地を次の世代につなげていくのが農業委員会の仕事。数年で町内の全筆調査を終え、担い手の確保など5年後、10年後に向けた具体的な道筋を立てたい」と力強く話す。

写真説明=左から森山さん、重村会長、桑原さん