新生農委 新規就農者の見守り活動 神戸市農業委員会

 神戸市農業委員会(井上重信会長)は2015年2月から市内の新規就農者の「見守り活動」に取り組んでいる。地域での人間関係を円滑にし、相談しやすい環境を作ることで、新規就農者の定着を目指す。
 昨年の9月まで同市農業委員を務めていた西区神出町の大西増弘さん(73)は、2014年からほぼ毎日、地域内の新規就農者の様子をうかがい、地区委員連絡会や事務局に状況を連絡する独自の見守り活動に取り組んできた。そのきっかけを「一人前に育つ前に農業をやめてしまうのが心苦しかった」と大西さんは説明する。
 同市では毎年、50人前後が新規就農する。「農業委員会だより」で新規就農者の名前・年齢・所属地域を掲載し、活躍する若手農家の紹介、地区委員連絡会で利用権設定前に新規就農者の紹介をするなど新規就農者対策に力を入れてきた。
 だが、連絡会では「農地が耕作されていない」「地域と就農者との関係が悪い」という意見が目立ち、新規就農者の栽培技術の問題や周辺農家たちとの関係が課題になっていた。
 そこで、農業委員会は、大西さんの見守り活動を全体で取り組むことを決めた。
 見守り活動で農業委員が主に取り組むのは、地域との関係や経営上のアドバイスと相談活動だ。地域の気象やルールなど経験をもとにアドバイスをする。栽培方法など技術的な相談はより詳しい別の機関を紹介し、その機関にはあらかじめ就農者の情報を伝え、両者の間をつなぐ。また、周辺の農業者にも相談ができるようにし、いつでも相談ができる環境を作る。
 大西さんの後を引き継いだ農業委員の渕上由美子さん(52)は農地に関する問題で支援した。「一人で判断すると違反であることが多い」と渕上さん。倉庫を農地内に建設したいという新規就農者の相談にのり、アドバイスを行った。
 昨年9月に就農し、大西増弘さんに相談をしている大西正憲さん(57)は「月2〜3回、様子を見てくれて大変心強い」という。また、3年前に就農し、初年度に台風でハウスが被害にあった小林努さん(35)は「出張中にも関わらず、どうすればいいか電話で相談に乗ってくれた」と大西さんに感謝する。
 大西さんは「現在は自治会長だが、今後も様子を見続けていきたい」と話す。
 見守り活動を始めて以降、離農者は確認されておらず、事務局では取り組みに手応えを感じている。
 そして、この活動は新規就農者にとどまらず、地域の農業者にも好影響を与えている。新規就農者の農業の仕方に関心を持つ人が地域内で増え、営農意欲の向上にもつながっている。

写真説明=大西正憲さんの圃場で(左から大西増弘さん、大西正憲さん夫妻、渕上さん)