中山間地で中間機構整備事業活用 地権者の信頼得て2法人に集積 宮城・七ヶ宿町農業委員会

 七ヶ宿町は宮城県の最西南端に位置し、南は福島県、西は山形県に接する南蔵王の麓の町。町の面積の9割が山林だ。七ヶ宿町農業委員会(太田幸一会長)は、農業委員6人と農地利用最適化推進委員4人の体制で、県や農地中間管理機構と連携し、農地中間管理機構関連農地整備事業の活用による農地の集積・集約化を進めている。

ライスファーム七ヶ宿の高橋理事(左)と梅津代表理事

圃場整備が予定される水田、荒廃農地が全て美田に復活

 2013年までに町の農地のうち、約74ヘクタールの水田が圃場整備事業に採択済みとなっていたが、七ヶ宿東部地区は水田面積約21ヘクタールで沢沿いの圃場が多く区画・農道が狭小。不在地主の農地や遊休農地が多く、取り残された地域だった。
 数年が経過し、さらに耕作者は減少、不在地主や遊休農地が増加、農地の維持が困難な状況になってきた。耕作者も高齢化し、耕作委託の希望が強かったため、地元負担がない農地中間管理機構関連農地整備事業の導入を検討した。
 地権者54戸が地元負担がない事業であることに魅力を感じ、また担い手側も圃場整備による作業の効率化が期待されることから事業導入に合意されたが、事業採択には担い手への農地の集約化、全対象農地に農地中間管理権を設定するなどの要件があったため、不在地主や相続未登記登記農地には苦労も多く、この解消のために1年半の期間を要した。
 地区の担い手とされたのは、(農)ライスファーム七ヶ宿と(農)千年塾の2法人。
 特にライスファーム七ヶ宿は構成員に農業委員・推進委員がいる。代表であり推進委員の梅津賢一さんは「圃場整備事業計画、換地計画の作成など、月1回以上話し合いに参加し、地区に積極的に関与してきた。不在地主に対しては、電話や親類縁者を通して集積の理解を求めたり、灌木が侵入した荒廃農地は地区住民総出で伐採除去作業を行うなど、地区外の担い手ではあるが、地権者の信頼を得て農地の貸借合意が得られた」と語る。

 取り残されていた七ヶ宿東部地区も2018年9月に農地中間管理機構関連農地整備事業に採択され、圃場整備が実施されることになった。会長職務代理者でありライスファーム七ヶ宿の理事でもある高橋美幸さんは「圃場整備により担い手側の作業機械効率が飛躍的に向上した。機械移動は苦にならず、外部からの担い手も参入しやすくなる。排水や圃場の条件が良くなれば、高収益作物の導入も可能になる。圃場の団地化により防護柵の維持管理が効率化するので鳥獣被害防止にも効果を発揮する。また、優良農地を持続的に管理していくことで、美しい農村景観を維持することができる」と話す。
 七ヶ宿町は町内全水田が七ヶ宿ダムの水源となる「水源のまち」だ。ブランド米としての「七ヶ宿源流米」、雪室を利用した「雪室仕込み米」など自然環境を活かした農業の発展が期待される。