委員が合意形成リード 兵庫・香美町農業委員会

「アンケートと農地の見える化でスムーズな話し合いになりました」と話す中村さん(左)と原さん       

 香美町は、但馬牛と良食味のコシヒカリで知られ、農業が盛んな町。中山間地域が多いこともあって、県内でも農地中間管理事業の利用率が低く、高齢化による遊休農地の増加が問題となっている。

話しやすい雰囲気作りに配慮して進行

 同町では、新たに「香美町農地集積集約促進事業」を創設した。農業委員と農地利用最適化推進委員が認める実質化された人・農地プランが策定されていることを条件に、農地中間管理機構に農地を預けた地域と、農地の受け手に奨励金を出す。農業委員と推進委員はプラン策定のコーディネート役に位置づけられており、今年3月に勉強会を開き、地域住民の意見を引き出し、合意形成を導く役割を確認した。
 「地図による農地の見える化が、農家の危機感につながり、スムーズな議論ができた」と話すのは、農業委員の中村成一さん(76)と原君枝さん(73)。
 同町香住区大野地区では、矢田川から用水を引き入れる井堰(いせき)の改修工事を契機に、香美町農地集約集積促進事業を活用しようと、人・農地プランの策定に取り組む。
 「同じ地域の人同士だから、話しやすい雰囲気作りを心がけた」と原さん。説明会では、自身も積極的に発言して、場が和むよう心がけたという。

 はじめに実施した農地利用に関するアンケートでは、農地の出し手と受け手の意向について、集落で情報共有することができた。70歳以上の人の耕作地を示す地図を見た多くの住民から意見が出され、プランの中心的経営体についても、わずか3回の会議で、選定するに至った。
 同町と同委員会は、あと2回の会議で農家・非農家の役割分担を明確にした人・農地プランが年内にも完成できる見込みだ。同町では、同地区をモデルに他地区でも話し合いが活性化することを期待している。
 「地域によって、困っていることはさまざま。個々の考えや思いをアンケートを通じて出し合い、人・農地プランの策定につなげてもらいたい」と中村さんは話す。