農地を活かし担い手を応援する 耕作放棄地解消へ 山口型放牧を展開 山口・防府市農業委員会

 山口県防府市では、近年、農業者の高齢化や減少などによる農地の荒廃化が進む。新たな担い手の確保・育成と耕作放棄地の解消や遊休農地の有効利用が課題だ。こうした中で、放牧による耕作放棄地の解消、「農地利用意向調査」による農地の有効活用、新規就農希望者や担い手への農地の利用集積、貸付希望農地への看板設置など、農地の有効活用に向けた活動を展開している。

 防府市は県の中南部に位置し、年間を通じて温暖小雨で、基幹作物である水稲を中心に、麦、野菜、果樹、花卉、畜産などを組み合わせた複合経営が盛んだ。
 同市農業委員会(藤井伸昌会長)では、全国的に有名になった「山口型放牧」を2010年からモデル的に導入し、耕作放棄地の解消や遊休農地の有効利用を図ってきた。
 また、昨年度に実施した「農地利用意向調査」の結果、農地中間管理機構への貸し出しを希望する農地は同機構に通知しているが、今後は後継者のいない農地などが借受希望者に有効に活用されることが期待されている。
 農業委員会事務局では、意向調査結果などの農地情報を各地区の農業委員や同市農林水産振興課と共有するとともに、新規就農希望者にとって大きなハードルとなる農地の確保に関する相談を始め、農地所有者からの売買や貸し付けの相談などを通じて担い手への農地の集積に結びつくよう対応している。
 特に、所有者が貸し付けを希望する農地は、所有者の申し出があれば周囲に分かりやすく表示するための立て看板を設置する。このほか、市の広報で農地の保全管理を呼びかけるなど、耕作放棄地の未然防止や遊休農地の活用を市民にも広く啓発している。
 同市は、来年7月に農業委員会が新しい体制に移行することから、既に今年3月の市議会で新しい農業委員・農地利用最適化推進委員の定数条例を制定している。
 両委員とも定数は18人ずつで合計36人となり、現体制より11人の増加となる。また、農業委員の円滑な任命に向けて公平性および透明性を確保するための委員候補者選考委員会条例も既に制定している。今後、農業委員などの募集に向け、市の広報やホームページで告知を行うよう準備を進めている。
 また、同農業委員会は、防府市農業の重点施策に対する農業委員の意見を取りまとめ市長への建議を行ってきたが、今後は、新しい制度の下で農地利用最適化推進施策など農業施策に関する意見の提出に取り組むこととしている。

写真説明=「山口型放牧」で耕作放棄地解消を進める