農地を活かし担い手を応援する 積極的に農地パトロール 熊本・人吉市農業委員会

耕作放棄地の発生を防ぐ

 熊本県の人吉市農業委員会(小園隆光会長)は、農地パトロールに積極的に取り組み、自ら耕作が困難な人には農地中間管理機構への貸し付けを促すとともに、農地の利用集積、担い手の育成にも力を入れている。小学生などの食育活動にも取り組むなど、地元農家と地域のために農業委員全員体制で活動する。

 熊本県最南端で、鹿児島、宮崎との県境にある人吉市。九州山地に囲まれた人吉盆地は、中央を日本三大急流の球磨川が流れ、農地は平地から標高700メートルの山間地におよび、中山間地を抱えている。
 耕作放棄地対策が同農業委員会の大きな課題だ。1700ヘクタールの農地を19人の農業委員で農地パトロール(利用状況調査)と意向調査を行っている。きめ細やかな現地調査を経て、これまで農地中間管理機構への貸付希望があった223筆、16.2ヘクタールを同機構に通知した。農業委員が積極的に農地パトロールを行うことで、耕作放棄地の発生防止の啓発にもつながっている。
 市は県民運動として独自の施策を講じて農地集積を進める県に呼応し、大柿、漆田、大畑麓の3地区が農地集積重点地区に指定されている。漆田地区では、隣接する入作農家も参加し、法人化を視野に入れた営農改善組合設立の準備中だ。
 同組合に移行予定の漆田地区農地集積加速化事業推進員会では、会長の上村邦明さん(漆田地区農業委員)と副会長の上野博司さん(大畑麓地区農業委員)の2人が、農業委員会と情報を共有し、推進員会をリードする。
 さらに、農業委員会は新規就農者との意見交換会を行い、相談や問い合わせに応え、農地探しなどには地元の農業委員が対応する。市では農地法第3条の下限面積を農用地区域以外に限り10アールにしている。特例を利用し今年、既に2人が新規就農者となった。
 また、2008年、当時の女性農業委員の発案で耕作放棄地の解消と農業理解活動を進めることを目的に、市農業委員会が事務局となり、「ひとよし食と農の絆づくり」プロジェクト会議を設立した。
 地元の小学生や消費者向けに、野菜作りや収穫体験を通した食育活動を現在も継続して行っている。農作業は、農業委員総出のボランティアのため苦労も多いが、「前よりも野菜が好きになった」といった子どもたちからの便りに農業委員の労も報われる。
 同農業委員会は、来年7月から新体制に移行する。
 小園会長は「中山間地帯の人吉の農業を活性化するには、担い手の育成が課題。地域の維持と農村環境を守るために農業委員と農地利用最適化推進委員が情報を共有し、共に活動していきたい」と力強く話した。

写真上=前列左から小園会長、荒毛正浩事務局長、後列左から堂坂高弘主任、和泉光代事務局次長

写真中=白菜の植え付け体験

写真下=営農改善組合の設立に向けた漆田地区の説明会