農地を活かし担い手を応援する 荒廃農地を再生し利用 千葉・いすみ市農業委員会

地元の女性農業委員などが奔走

 千葉県中央部のいすみ市を走るいすみ鉄道の国吉駅南側に広がる7ヘクタールほどの農地。耕作条件が悪く、荒廃していたが、地元農業委員の山下玲子さんは地域のためにと、同市農業委員会(重田勝海会長)とともに多くの課題を乗り越え、その農地を再生し、農地の利用集積を進めている。

 国吉駅南側にある7ヘクタールの農地は、鉄道の踏切が狭く、進入路が細いため、大型機械の出入りができず、耕作条件の悪さからアシなどが茂り、耕作されない農地が増えていった。2015年、最後の耕作者が高齢化で農地を返還し、全てが耕作されなくなった。
 同市農業委員会は同年、その農地を維持・活用するため、耕作地への唯一の進入路、道幅の狭い踏切改修をいすみ鉄道と交渉した。改修には多額の費用が掛かると不調に終わり、農地再生は行き詰まった。
 その後、紆余(うよ)曲折があったが、農業委員会と農地中間管理機構の連携で、耕作してくれる中堅農家を見つけた。しかし、利用するには長年放置され、車の進入に支障がある農道や用水路を何とかしなければならない。そこで、農業委員会は耕作者に協力し、荒廃した農道に砕石を入れて、軟弱な農道を補強するなど、耕作の利便性を向上させる支援に取り組んだ。
 これと並行して、農業委員会では、農地中間管理機構を通じて農地を利用集積することにした。地元地権者への説明会を開き、二十数人が集まった。長年荒れた農地の再生に懐疑的な意見も出たが、最後は満場一致で貸し付けることを決めた。
 だが、地権者の死亡による相続の発生、不在地主への連絡先調査などは、個人情報保護の壁もあって思うように進まない。権利者が特定できないことだけでなく、特定できても契約までには予想以上に時間が要した。それでも、地元地権者や農業委員の協力を得て、4ヘクタールほどの農地はこの6月から作付けを始め、現在は緑の水田になっている。
 山下玲子委員は「地元地権者からの悲痛な訴えに、新米農業委員としてどう対処してよいかわからず、途方に暮れました。農業委員会の協力が得られ、荒廃農地の解消にめどが立って、今はほっとしています」と胸をなで下ろす。
 農業委員会と地元地権者は引き続き今年、再生できなかった区域の道路拡張や荒廃地の再生などを、耕作者とともに考え、支援していくことになった。
 地元では稲刈り後、菜の花の種をまき、来春、復活した農地を花のじゅうたんにしたいと希望を膨らませている。

◆地域の特徴◆
 いすみ鉄道と夷隅川に囲まれた土地で、進入路は狭い踏切1カ所だけ。圃場も昭和30年代の耕地整理で、10アール以下の区画の水田が多く、川に向かって階段状になっており、大型機械での耕作には不向きで、不作付けや耕作放棄が増加していた。

写真上=再生した荒廃農地。条件を整えながら、耕作者への利用集積が進む

写真下=山下玲子委員