企業参入のススメカタ(4) シーキューブ(岐阜・坂祝町) 参入は地域の理解得るのが肝心

「岐阜県さかほぎ産 アイコ」を栽培する相川農場長                 

 「商品名に“さかほぎ”を入れた。これこそが、私たちの地域への想(おも)いを象徴している」そう語るのは、シーキューブ(株)(愛知県名古屋市)農業ICTチームの伊藤慎一さん(39)。
 同社は2018年7月、岐阜県坂祝町にハウス栽培施設(3260平方メートル)を建設し、同年12月から高糖度ミニトマトの生産を開始した。1954年の創業以来、通信設備工事を基盤事業とする同社。近年は、他分野の新規事業開拓に取り組んでいる。3年前からICT(情報通信技術)を活用した農業分野への参入を検討していた。
 企業参入に限らず、新規就農でまず課題になるのが農地の選定・確保だ。同社でも候補地を探すために、支店のあるいくつかの県や関係機関を相談してまわった。同社の経営企画部の加藤由朗さん(32)は「好意的に受け止めてくれたのが岐阜県だった」と言う。当時、県内の企業参入の相談窓口を開設していた岐阜県農業会議に相談したところ、即座に同社の支店があった坂祝町の農業委員会(兼松幸史会長)を紹介された。話を受けた同委員会は、町内で保全管理されている農地を委員らが中心となりピックアップするなど、積極的に支援した。
 同委員会では、直近で管内に企業参入の前例やノウハウがあったわけではなかった。担当者は「町内に支店があり、地元企業という認識があったことも支援するうえで後押しになった」と話す。

 2017年7月頃には町内で2筆の候補地が見つかり、地権者の了解も取り付けた。しかし、同社が行った地元説明会で騒音や排水を懸念する声が上がった。同社は騒音などの影響を独自に調査し、戸別訪問を通して説明したが、結局断念せざるを得なかった。「支店がある地域の理解を得ないまま、進めるわけにはいかなかった」と加藤さんは話す。
 その後も、他の候補地を探すため、同委員会では聞き取り調査や周辺住民への説明を粘り強く継続した。その結果、2018年4月に支店に隣接する2筆の農地約5700平方メートルを農地中間管理機構を通じて借り受けることができた。
 今年4月には同委員会の委員全員で圃場の視察を行った。当初は農業経営ができるのか不安視する声もあったが、提携企業や県の普及員の技術支援もあり、順調に生産を伸ばしている。
 同施設の農場長を務める相川和正さん(32)は「作業工程の改善と収量アップが直近の課題。地元農家からの信頼をさらに高められるよう努力したい」と意気込みを語る。