所有者不明農地の有効活用へ 北海道・むかわ町農業委員会

 2018年の農業経営基盤強化促進法などの一部改正において、農地法第41条では所有者不明農地の所有者の探索方法が明確になった。それとともに、確知できない所有者の「みなし同意」が制度化され、農地中間管理事業による所有者不明農地の貸借が容易になった。北海道むかわ町では、この制度変更を活かし、積極的に農地の貸借につなげている。

所有者探索と並行して現地調査するむかわ町農業委員(同町農委会提供)

18年以降、この仕組みを利用して農地の有効活用に結び付けた道内の市町村数は8市町で、延べ17件。そのうち半数の8件はむかわ町だ=表。
 太平洋に臨む、むかわ町。町名の由来となった1級河川「鵡川(むかわ)」に沿って農地が広がる。同町洋光地区では24年、農業者が高齢を理由に離農を決意。農地の売却意向を受けたむかわ町農業委員会(佐々木保成会長)が離農者の所有農地を調べたところ、隣接する遊休化した農地およそ20㌃が「所有者不明」であることが判明した。この土地は明治時代に所有権が登記された後、一度も名義人が変わっていなかったという。
 離農者からの農地購入を望む農業者の「この遊休農地も一体的に利用したい」という申し出を受けた農業委員会では、農地法に基づく「所有者の探索」を24年5月から開始。その結果、登記名義人の住所は町内で、農業委員会が戸籍などを取り扱う町民生活課から得たのは「住民票、住民票の除票ともに確認できない」という情報で、本籍地の特定に至らなかった。
 このため、所有者の探索を終了し、11月から2カ月間「当該地が所有者不明である」旨を公示。この公示に対する所有者などからの申し出が無かったことから、農業委員会は農地中間管理機構に対して「所有者不明である」ことを通知した。
 通知を受けた機構は、今年1月に、権利設定に関する裁定を道知事に申請。今月から10年間の賃貸借が始まった。

町内では、23年度にも所有者不明農地に利用権が設定されている。同町田浦地区の7筆およそ1.3㌶の農地は、貸借期間中の1993年に所有者が死亡。貸借期間が満了する後も「引き続き借りたい」という賃借人の意向があったが、所有者の相続人の全員が相続を放棄していた。所定の手続きを経て農業委員会は所有者不明と判断して、2018年から5年間の貸借を開始。その期間が満了した23年に、再び機構が利用権を設定した。
 むかわ町農業委員会の東和博事務局長は「所有者探索における農業委員会の事務量は多いが、農地の遊休化の防止、担い手への集積のために、今後も取り組んでいく」としている。