耕作放棄地解消と食育活動に力注ぐ 栃木・鹿沼市農業委員会
鹿沼市農業委員会(大森用子会長、農業委員19人、農地利用最適化推進委員19人)は、耕作放棄地の解消や子どもたちへの食育活動に積極的に取り組んでいる。地域農業の再生と発展をめざし、委員自らが現場での活動を通じて地域農業の活性化を進めている。

高齢化や若年層の農業離れが進み、担い手不足と耕作放棄地の増加などが全国的な問題となっている。
そんな中、鹿沼市では早くからそれらの解消に向けた取り組みを始めた。
2012年、農業委員の「市内で増え続ける耕作放棄地を何とかしたい」という声をきっかけに、話し合いがスタート。翌13年には、農業委員や委員OBなどをメンバーとする「鹿沼市農地再生プロジェクト〝絆〟」が組織され、本格的な活動が始まった。
プロジェクトでは、委員たちが自ら道具を持ち寄り、耕作放棄地の草刈りや木の伐採、ゴミの処理など、長時間にわたる作業を実施。活動は毎年行われ、これまでに解消された放棄地の面積は12万6405平方㍍に及ぶ。
整備された農地には、市の特産物であるソバが植えられ、市内の飲食店で「鹿沼そば」として提供されている。
この取り組みは、地域農業の再生に向けた重要な一歩となっている。

市の食育計画が策定されたことを受け、子どもたちに日本の食文化や農業について関心を深めてもらおうと、14年から市内の小学校で食育活動が始まった。この活動は、各委員が市内の全ての小学校に連絡を取り、協力を得る形で進められる。
現在では、担当地区の農業委員や推進委員が学校に出向き、ジャガイモやサツマイモの苗植えから調理までを行う農業体験をはじめ、藁枕(わらまくら)の設置や紙芝居の読み聞かせなどを毎年2~3校で実施している。
この活動では、収穫作業だけにとどまらず、算数や理科の授業で「一つの種から何個のイモが育つか」や「デンプンとは何か」など、農業体験を通じて多角的な学びが展開されている。
さらに、子どもたちは自分たちが育てた作物を販売し、その成果としてお金を得るなど、実社会とのつながりも実感できる貴重な体験の場になっている。
大森会長は「食育活動を通じて、子どもたちの成長とともに食や農業への関心が深まっている。農業の話題が家庭内で広がってほしい」と期待を込める。