後継者や若手中心に農年推進 静岡・御前崎市農業委員会

 御前崎市農業委員会(山下智久会長、農業委員10人、農地利用最適化推進委員21人)では、農業者年金の加入推進に力を入れる。制度の説明や戸別訪問を丁寧に実施することで、9年間で35人の新規加入につなげた。

山下会長

 御前崎市は県の南端に位置し、茶、水稲、イチゴ、メロン、トマト、花き、露地野菜など特色ある農業が行われている。
 御前崎市で農業者年金加入推進部長も務める山下会長(69)は、2007年4月に初めて同市の農業委員になり、16年4月に農業委員会会長と加入推進部長になった。農業委員になるまで山下会長自身は加入の機会がなかったが、現行制度について説明を聞いた際、その良さを知り、息子夫婦を加入させた。
 加入推進部長になってからは、若手農業者の親世代に知り合いが多いことから、その後継者や若手農業者を中心に戸別訪問を実施した。
 訪問時に決めたことは、事前にアポイントを取り、説明を短時間にすること。時間をかけるより訪問回数を重視し、1回20分以内になるように工夫。短時間で帰るようにして好感を持ってもらえるようにしたという。さらに、後日再訪問を行い、加入の意向を確認した。
 受給する年金額についても明確にわかるようにした。農業者年金基金のチラシや、農業委員会事務局が作成した試算表を持参し、具体的な受給額を示すことで目標を持ってもらえるようにしている。農業委員会独自で作成した「農業者年金加入の手続きについて」も活用し、加入申込書の提出先、必要書類、連絡先などを示した一覧表を一緒に渡している。
 最後に「まずは1年加入してみてください。休むこともでき、再開することもできます。毎年6月に運用(付利)結果の通知も必ず届きます」と話すようにしているという。

各委員に情報提供をしてもらい、山下会長と事務局で訪問先を選定する

 山下会長は、加入推進活動内で年金の説明だけではなく、農地あっせん、経営相談、規模拡大などの相談にも乗るよう心掛けている。
 21年度からは、1年に1度、農業委員全員で加入推進対象者の情報を共有し、各委員が候補者を1人以上あげ、先に声を掛ける。その後加入推進部長である山下会長と事務局で選定し、戸別訪問する。
 これらの取り組みにより、加入者も増加。同市では16年度から24年度までの9年間で35人が新規加入した。20年度には、基金主催の農業者年金事業表彰で、目標達成度合い(新規加入目標1~4人)で3位(達成度合い550%)、同(39歳以下目標1~4人)で2位(同600%)を受賞している。
 山下会長は、「まだ、農業者年金について知らない人が多い。女性でも加入でき、支払った保険料は全額社会保険料控除の対象になるなど、メリットも多い。若い農業者へも声掛けし、農業者年金制度を知らない人がいないよう幅広く周知していきたい」と今後も推進に力を入れると意気込む。